「英語なんて大っ嫌いだ」と叫んだ先生 | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

高校時代のある日。
どんな話の流れだったか…、お世話になっていた先生が仰った。

 「俺は英語なんて大っ嫌いだ!」

もちろん英語の先生ではなかったけれど、英語を勉強しなければならない受験生に向かって、『高校教師』がそのセリフを口にするとは。
今思えばあの先生、なかなかの強者。

さて、先生の過去に何があったのか。



ある時期、先生は勉強のために海外にいたらしい。
まだまだ『グローバル化』とはほど遠い時代。
英語の苦手な先生は、懸命にルームシェアの相手とコミュニケーションをとろうとした。

「朝起きて、そいつに朝ごはんを食べたかを聞いたんだよ。
 そうしたらいきなり、首を絞められた。
 『朝食を食べたことがあるかなんて、お前は俺をバカにしてるのか!』って。
 学校で習ったとおり、ちゃんと完了形を使って言ってやったのに。
 本っ当に、腹が立った!」

未だ怒りが収まらないのだろう先生は、話しながらもプリプリ怒っていた。

私たちが中学校で習った現在完了形。
あの習い方を少しでも覚えている方は、何となくわかったのではないだろうか?

私たちは『have + 過去分詞』で現在完了だと習う。
でもこの『現在完了』という感覚は、日本語とは少し違うから、戸惑うことも少なくない。

『終わってる』ことをさすときもあれば、
『今終わった』ときもあるし
『経験』を表しているときもある。

私は英文法が苦手。
学生時代、例に漏れず私もずいぶん混乱させられた。
おそらくネイティブにとってはシンプルな言い回しなのだけれど、私にはさっぱりわからない。


「Have you had breakfast?」(朝食は食べた?)

たぶん先生はこう聞きたかった。
でもおそらくこう聞いてしまったのだ。

「Have you ever eaten breakfast?」(朝ごはんを食べたことはありますか?)


わからないけどね。私の予想だから。
でもこう考えれば、少なくとも『バカにしてるのか!』と怒った相手の一部は理解できる。

だからって首を絞めるほどのことか?!とは思うけれど、あの時代、彼の出身国によっては『金のある(と思っている)日本人に貧乏だと馬鹿にされた』と曲解されてしまってもおかしくはなかったのかもしれない。
あくまで私の想像だけど。

先生、今も変わらず英語がお嫌いかな~?