『This is a pen.』 は本当に使えないのか | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

語学を“勉強”するとなると、必ずといっていいほど
最初に学ぶ流れが決まっている。

1.あいさつ

2.『私は~です』
  『これは~です』


「 『This is a pen.』 なんてどこで使うんだ~!!
 『これはペンです』って、知っとるわ~!!」
と声を大にして唱える人が多い割に
違う言語を始める際も実はあんまり変わらない。

おもしろい。


さてこの 『This is a pen.』、本当に使えないのだろうか?

実はそんなことないのでは? と私は思っている。

何故なら、実際の会話を振り返ってみると
『This is ~』 や 『That is ~』 は、かなりよく使っているから。

対象を『ペン』だと考えるから文句を言いたくなるのだと思う。



先日我家になってきたブルキナファソのBさん。
彼女は働きながら3人の子どもを育てている。

彼女はとてもがんばりやさん。

プレゼンが認められて国から派遣されたり
表彰された数人のうちの唯一の女性だったりした。

すると年齢も立場も上の職場男性が妬いて意地悪をしてきたりして
仕事がしにくくなると言う。

女性が働ける社会になったとはいえ、社会そのものはまだまだ男性優位。
このあたりは、似たような状況にある国がけっこう多い。

「この男性上司2人がこんなでね~…」
と、ホトホト参った様子のBさん。


 ああ… 男ってそうだよね…


そう言いたくなる働く女性は多いのではないだろうか。
(もちろん、そうじゃない男性もいる。
 今言いたいのは社会体制の問題点への指摘ではないので許してね)

このとき、私が言ったフレーズがこれ。


 『That is the man!』


Bさんは一瞬目を点にした後、大笑いしていた。



『これは~です』 『あれは~です』

確かにその文章に囚われてしまうと、使わない。

日本語でだって
『これはペンです』 『あれは本です』
なんて言わないもの。

でもこの 『This is ~』 や 『That is ~』 の本質はそこではないように思える。

だからそこからちょっと離れて英語の世界を眺めてみると
意外と使い勝手のいい、便利なフレーズになる。


私がBさんに言いたかったのは

 『あれは男性です』

ではなく

 『それが男ってもんよね~』

ということ。


私は英語の専門家ではないし、ネイティブでもないから
それがいわゆる“正しい”言い回しなのかどうかはわからない。

でもBさんには通じていた。

「Yes!」と言って大笑いしたBさんの反応がすべてだ。


 『それがコトバってもんよ!』


なーんて(笑)