構文名を知ってても、英語は話せなかった | ことばの魔法 ことばのチカラ~ことば探検家ひろが見つけたコトバと人間

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ことばに宿る、不思議なチカラ。
人間の言語習得やコミュニケーション能力の奥深さはまだ解明されていないけれど、とんでもなくおもしろい。
気づいたら私のコトバ探検は本格化されていた。

私は『多言語を自然習得しよう♪』という活動を楽しんでいるので
基本的に語学の“勉強”はしていない。

でもことばに興味がある以上、いろいろなことが知りたくなる。

そこでたまにぼんやり眺めてつまみ食っているのが語学番組。

「覚えるぞ~!」とか
「構文を理解するぞ!」とか
そんな気合いはまったくなく…^^;
「○○法という文法表現で…」なんていう説明もスルー。

だって私の場合、
文法表現の名前を覚えても話せるようにはならないんだもの。



例えば英語の授業に出てくる『仮定法過去』。
覚えてますか?

そんな表現もあったな~…なんて思い浮かぶ方はスバラシイ!

私は一時期オーストラリアの語学学校に通っていたときに
その言葉を口にした日本人の女の子に衝撃を受けた。


 何それ??


その時やっていたのは
「If I (現在形)~, I will ~」 と 「If I (過去形)~, I would ~」の違い。

 「If I (現在形)~, I will ~」 だと、可能性のある未来。
 例えば 「明日もし晴れたら、私は公園に行きます」

 「If I (過去形)~, I would ~」 だと、ありえないこと。
 例えば 「もし私がイタリア人だったら、毎日パスタを食べるのに!」

私は語学学校でこれを対比的に学び、「へ~!」と感心した。

 こりゃおもしろい。

 初めて知った~!!

でも実は、どうやら初めてではなかった。
高校の頃に学んでいたらしい。

思い返してみれば、そんな言葉もあったような…なかったような…
そんな私を横目に、その言葉をさらりと口にした彼女にびっくり。

私は人生で初めて聞いたと思っていたのに。
しかもそんなものに構文名があるなんて、考えてもみなかったというのに。


この仮定法現在と仮定法過去の違いがおもしろくて
私はワクワクしながらホストマザーに話した。

「If I ~ の後が現在形だと I will ~ ってなって可能性のある未来で
 If I ~ の後が過去形だと I would ~ で可能性がない未来でしょ?」

すると彼女は眉を寄せ、ひとこと

「わからない」


 え?

 わからないの??


びっくりした。


 ネイティブなのに、わからないの~~~?!


でもその後、すぐに思い返した。


 ネイティブだから、わからないんだ!!


だって彼女達は、そんなこといちいち考えて話していない。
私たちが文法的なことを考えながら日本語を話していないように。

例えばこう。

「『時間』は名詞だから、形容詞『楽しい』の活用は『楽しい』のままで『楽しい時間』。
 でも『過ごす』は動詞だから『楽しい』の『い』は『く』に変化して『楽しく過ごす』になる。
 だから 『私は楽しい時間を過ごしました』 か 『私は楽しく過ごしました』 って言うんだ!」

こんなこと、いちいち考えていない。
ちなみにこれに構文名がついているのかどうかは知らないけれど
名前がついていないとも言い切れないのが言語学。

そう考えると、何ともオソロシイ…。



ただでさえ、長年問題になっている“語学の勉強”は
人間が赤ちゃんの頃から自然に習得する母国語とは真逆の学び方をする。

その上、構文の名前そのものまで難しい。

本来はカンタンなはずのものが難しくなっている。
そんな気がする。



ちなみに私のホストマザーは南アフリカ出身。
南アフリカも英語圏なので、彼女も英語ネイティブだ。

そんな彼女が私に言った。


「ひろと暮らしはじめてから、私の英語がすごく上達した!(笑)」


今、私はいろいろな国からのゲストを受け入れ触れ合うことで
彼らの言葉だけではなく、日本語を見返す機会をたくさん得ている。

彼女の言っていたあの言葉。

10年経って、私は今、実感している。