高城未来研究所「Future Report」、その1

ふじかわ心療内科クリニック 藤川徳美先生
第1回「心の病はプロテインで治せる?」

今回訪れたのは、広島県廿日市市下平良にある心療内科、神経科、精神科の「ふじかわ心療内科クリニック」。院長の藤川徳美先生は、現在16刷のロングセラー『うつ消しごはん』や、方丈社で一番のヒット作である『すべての不調は自分で治せる』などの著書がある。

今では精神疾患のみならず、それ以外の疾患の治療のために、全国から患者が殺到しているクリニックだ(*現在は地元の方が通えるよう、初診は中国地方在住の方のみに限定している)。藤川先生に、薬に頼らず自分で病気を治すメソッドを伺った。

【ふじかわ心療内科クリニック 藤川徳美先生1/4】

▼完治を目指さない医療に疑問を持つ

Future Report研究員:先生の本は『うつ消しごはん』や『メガビタミン療法』など、かなり読んでおりますので、お目にかかるのを大変楽しみにしていました。生い立ちから伺いたいのですが、先生のお生まれはどちらでしょうか?

藤川:広島県の北部の三次市というところです。

Future Report研究員:お父様やお母様は医療関係者ですか?

藤川:いや、ぜんぜん違います(笑)。

Future Report研究員:いつごろ医療の道に進もうと思ったのでしょうか?

藤川:高校受験で広島の進学校に入ったのです。3年間で進路を考えて、広島大学の医学部へ入りました。

Future Report研究員:医学部を志した動機は何だったのでしょうか?

藤川:子供の頃に熱を出して、医者に診てもらったので、そのときから憧れは抱いていましたね。

Future Report研究員:広島の医学部の生活はいかがでしたか。

藤川:高校は進学校ですからかなり勉強しないとついていけず、大変でした。それまでは田舎の高校では何もしなくてもトップでしたが、高校に入るとレベルが全然違ったのです。医学部では浪人も留年もなく6年間で卒業して、医局に入りました。今は臨床研修を2年間してからですけど、当時はすぐに入局だったのです。

Future Report研究員:どの科に入られたのですか。

藤川:手先が不器用なので「外科系よりは頭を使う内科系か精神科がいいだろう」と考えて、最終的に精神科を選びました。

Future Report研究員:そのときから精神科一筋なのですね。

藤川:24歳から精神科に入って、今年で36年目になります。

Future Report研究員:広島大学医学部附属病院の精神神経科、県立広島病院精神神経科、国立病院機構賀茂精神医療センターなどに勤務されていたのですよね。

藤川:そうです。1年間は広島大学の医局で研修をして、2年目からは関連病院を回っていました。7年目くらいに大学病院に帰って、論文を書いて医学博士を取ったのです。

Future Report研究員:先生は老年発症のうつ病に関する研究などをされて、論文もたくさん執筆された経歴がありますよね。こちらの「ふじかわ心療内科クリニック」を開院されたのはいつごろですか?

藤川:2008年、48歳のときです。今年で12年目になりますね。

Future Report研究員:なぜ、広島県廿日市で開業なさったのでしょうか?

藤川:マーケティングをして決めました。

Future Report研究員:でも先生のところには遠くからも患者さんがいらっしゃいますよね?

藤川:今はそうですけど、当時はまだ普通の治療をしていましたから。

Future Report研究員:今「普通」とおっしゃいましたね。先生にとって普通とは何ですか?

藤川:薬を使った治療ですよね。薬の使い方にはすごく自信があったんですよ。誰よりもうまいという自負があって、治せるものだと思っていました。

Future Report研究員:ところがある日から180度に近い形で変わられたわけですよね? きっかけはどこにあったのですか。

藤川:開業してから、どんどん肥満になったのです(笑)。 

Future Report研究員:今はすっきりされていて、とても肥満体だったとは思えませんね。

藤川:今は65kgですが、当時は79kgまで太ったんです。勤務医のときは病棟や外来の往復でいろいろと動き回っていたのですが、クリニックを開業してからは一日中診療室にいますので、運動不足になって太ってしまいました。スポーツジムで走ったりしたのですが、まったく痩せません。半年かけて糖質量を減らしていったら、みるみる体重が落ちました。

Future Report研究員:糖質制限ですね。

藤川:当時は花粉症もすごくひどかったのです。薬を飲んでも効かなくて、鼻粘膜をレーザーで焼いたり、ステロイドの注射を打ったりしていました。それが糖質制限だけで完治してしまったのです。

Future Report研究員:食べ物が不調の原因だったということですね。それは何年前の話ですか?

藤川:10年くらい前ですね。

Future Report研究員:では開業して2~3年ですね。ご自身の体調不良をきっかけに糖質制限をしたら、体調が良くなったと。

藤川:付け加えると、クリニックに来た患者も薬で良くはなるのですが、完治しませんでした。

Future Report研究員:一般的な精神科医は、問診や検査から症状を診断して薬を処方しますよね。それに加えて心理療法や認知行動療法を行うのが普通です。それでは治らなかったのですか?

藤川:そういったスタンダードな治療では治らない患者さんがほとんどでした。

Future Report研究員:そもそもうつ病などの精神疾患は完治することが難しいと言われていますよね。薬を飲んで症状が出なくなる「寛解」という状態が一定のゴールではないでしょうか。

藤川:そもそも、一般的な精神科治療には疑問を感じていたのです。寛解でよしとするのではなく、完治を目指すべきだと思って、分子栄養学の理論を取り入れ始めました。人が生きていくエネルギーを得るために最も大切な生命活動は代謝です。スムーズな代謝を促すためには、タンパク質を筆頭に鉄やビタミンなどの栄養素が必要になります。その栄養が満たされなければ、代謝で得られるエネルギーが少なくなるため、だるい、重い、つらいといった不調がつづき、何をするのも億劫で気力のない日々を送ることになります。

Future Report研究員:なるほど。心の病や、うつ病予備軍のような症状の原因は、栄養不足だったということですね。

藤川:そうです。精神疾患だけではなく、リウマチやアトピー性皮膚炎、神経難病、がんの患者を調べると、例外なく低BUN、低フェリチンでした。そのような方々に栄養療法をすると、「気持ちが楽になった」「キビキビ動けるようになった」という臨床例がたくさん出てきたのです。

▼初診の前からプロテインを飲んでおく

Future Report研究員:先生ご自身も非常にエネルギーにあふれて、キビキビされていますよね。患者さんにはどのようなご指導をされたのでしょうか?

藤川:当院における栄養療指導は、まず「タンパク質をたっぷり摂りなさい」と指導しています。初診の患者さんには、予約が入った段階で「プロテインを飲んでおいててください」とお願いします。

Future Report研究員:診療の前に、プロテインを飲んでもらうのですね。

藤川:プロテインを飲んでいたらメガビタミン療法も早くスタートできるので、プロテインが先行なのですよ。長く通院している患者さんにも機会をみてプロテイン服用をすすめているうちに、ほとんどの患者さんがプロテインを飲むようになりました。

Future Report研究員:プロテインを飲んだ患者さんは、臨床的にどうなりますか?

藤川:プロテインを飲んでいない人に比べて、少量の薬でも圧倒的に効果が出ますし、副作用も軽減します。

Future Report研究員:どうしてプロテインを飲むと、疾患が改善するのでしょうか? 先生の本にも書いてありますが、改めてご説明ください。

藤川:私たちの筋肉や骨、皮膚、臓器、血液検査、代謝酵素、消化酵素、ホルモンなどはタンパク質を原料にしています。基本的な生命維持に欠かすことはできないですし、神経伝達物質の原料になっていることから、心の健康にも直接的に影響しています。

Future Report研究員:体をつくる材料が足りないと、いろいろなところが壊れて、不具合が起こるということですね。

藤川:そうです。体内のタンパク質は分解と合成を繰り返し、新しい細胞が古い細胞と入れ替わります。肝臓なら約2週間、赤血球は120日、筋肉のタンパク質は180日でその半分が入れ替わります。この半減期のときに、体内のタンパク質が減少することは避けられません。大人の場合、一日に200~300gのタンパク質が体内で分解されています。

Future Report研究員:積極的に補給しないと、体内のタンパク質はどんどん減っていくということですね。どれくらいの量が必要なのでしょうか?

藤川:当院の患者には、BUN15~20(mg/dℓ)を目指してもらっています。プロテインスコアで換算する場合は、「卵3個で20g、牛肉200gで30g、体重65kgの男性なら、卵3個+牛肉300gです。例えば体重50kgの女性なら、卵3個+牛肉200gが最低ラインと伝えています。

Future Report研究員:結構な量ですよね。なかなか食が細くて食べられない人はどうするのでしょうか?

藤川:男性の場合は、高タンパク、低糖質食、体重の1/2gのプロテインによって、比較的容易にBUN20以上となります。肉や魚、卵をしっかり食べる人であれば、プロテインなしでも達成できます。一方、女性は月経や妊娠、出産によりタンパク質を失うので、食事だけでBUN15を超えるのは極めて難しいと言えます。旦那よりたくさん肉を食べるような人であればいいのですが、大半はプロテインを飲まないと追いつけません。

Future Report研究員:先生がおすすめしているのは市販しているプロテインですか?

藤川:今はビーレジェンドという会社のプロテインを下の薬局に入れてもらっています。ザバスに比べて安いし、おいしいのですよ。

Future Report研究員:ホエイプロテインには、大きく分けてWPCとWPIがありますね。WPCには乳糖が含まれていますが、WPIは乳糖が完全に除去されています。どちらを使われていますか?

藤川:ほとんどの人はWPCで大丈夫だと思います。WPCが飲めなくて、タンパク質の純度の高いWPIでないといけない人は本当に稀ですね。100人に1人いるかどうかです。

Future Report研究員:プロテインが飲めないという人は、乳糖不耐性ということですか?

藤川:乳糖不耐性というより、慢性的で深刻なタンパク質不足が原因です。男性ならほとんどの人が最初から20g*2の規定量を飲めるのですが、女性の約半数は飲めません。

Future Report研究員:それは消化酵素が足りないのでしょうか?

藤川:そうです。プロテインは消化酵素の働きによって、アミノ酸に分解されて体内に吸収されます。もともとタンパク質不足の人は、消化酵素が足りないので、飲むとムカムカしたり、胃が気持ち悪くなったり、膨張感でご飯が食べられなくなります。時々「焼肉を食べるとおなかを壊すから苦手」という人がいますよね。それは消化酵素が足りていないのです。典型的なタンパク質不足の症状です。

(つづく)

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