自然治癒の健康相談ー36,「理想食」への移行プログラム
三石巌:全業績ー6、分子栄養学の健康相談、より
ここで「理想食」といっているものは、タンパク質とビタミン類とを、必要にして十分なだけとる食事をさします。その理想食をとることによってはじめて、全ての代謝がスムーズに行われ、高い健康レベルが保たれる、というのが私の考え方です。
むろん、私の頭の中には、われわれ日本人の食習慣が、低タンパク食、低ビタミン食の性格をもっている、という認識があります。また同時に、各種ビタミンの要求量に大きな個体差があって、すべての人が、ほとんど例外なしに、いくつかのビタミンを大量に要求している、という見方があります。ですから、理想食と一口にいっても、その内容は人それぞれにちがうのです。
私ごとにわたって恐縮ですが、私が鉛中毒患者でありながら、大きな支障なく暮らしているのは、ひとえに理想食のたまもの、と私は思っています。
私の理想食の内容は、ここまで発表したとおり、多種多様の栄養補助食品をふくんでいます。わたしとしては、この種のものは理想食を構成するために存在する、と考えます。したがって、これは本質的に薬ではないのです。
理想食への移行をいきなりやってのけて平気な人がいるかと思うと、どこかに故障がおきて、不満をもらす人がいます。何十年もひきつづき低タンパク食、低ビタミン食をとっていれば、どれかいくつかの代謝が、ほとんど休眠状態におちいっているおそれがあります。そこに理想食をあたえられたら、あっちでもこっちでも寝た子がおきるので、ご当人のからだは面食らわざるをえません。いいつもりで栄養補助食品やビタミン剤をとったのに、下痢がおきたり、湿疹ができたり、おなかが張ったり、というケースがしばしばみられるのです。
よく「栄養のバランス」という言葉が聞かれますが、必要なのは栄養素のバランスではなく、絶対量です。現実には、かりにバランスは取れていても絶対量は不足なのがふつうだと思います。そういう栄養失調食であれば、病気にならないのが不思議です。それで健康だという人がいれば、綱渡り的健康状態です。
ここで「移行プログラム」といっているものは、栄養失調食から理想食への切りかえのための措置を意味します。ここでの難関は、その人にとっての理想食の内容がつかめないことです。だから、タンパク質はともかく、ビタミン類は徐々に増量し、十分に大量にとった段階で、体調を検査します。低血圧や高血圧の人は血圧を測ってもらい、肝臓病の人はGOT、GPTなどの酵素濃度を測ってもらい、糖尿病の人は血糖値を測ってもらいます。肩がこるとか、膝がいたいとか、胃の調子が悪いとか、疲れやすいとかならば、医者に診てもらわなくても異常はわかります。
こういった症状がなくなったら、ビタミンEなどは少しずつへらしてゆきます。そして、どこまでへらして大丈夫かの見当をつけ、それを維持量とします。
たとえば、H夫人の弟さんが、高血圧、糖尿病で倒れて入院したとき、ビタミンC3g、ビタミンE1000IU、配合タンパク(プロテイン)30g、という指示をしました。むろんこれは最大量に近く、それを目標として増量していったのです。これは食事の内容の指示ですから、医者にことわる必要はありません。弟さんは、これで完全に回復してゆきました。
その段階で、ビタミンEは300IUにまでおとしましたが、現在のところ、それで糖尿病はおさまっています。
元記事はこちら