4月のメグビーメールマガジン、より

三石巌の書籍で、現在絶版のため読むことができない物の中から、「高タンパク健康法」サブタイトル毎にご紹介させていただきます。

第1章 ~高タンパク食の軌跡~
 ― 意外におおい低タンパク食による病気 (1)

【回復した老眼の度】
 まず最初に、ふつうの食事にタンパク質を追加したとき、肉体にどんな変化が見られるかを、具体例によって示すことにしよう。
 ただし、ここで追加するのは、特別に配合した良質タンパクの粉末である。それを“配合タンパク”とよぶことにするが、それにはいろいろな品質のものがあって、勝手な商品名のもとに市販されている。
 九州のあるところに、初老の夫婦がいた。彼らの目はすでに老眼になっていて、老眼鏡を手放したことがない。あるとき夫婦は、ある人から配合タンパクをすすめられた。それは、べつに目のためでも何でもなく、漫然と保健のためという認識であった。
 3ヵ月ほどこの配合タンパクをやっているうちに、どうもめがねが合わなくなった。要するに、老眼鏡をかけても、物がよく見えなくなったのである。しかもそれが、二人に共通に出現した障害であった。彼らは、べつに目のために悪いことをやった覚えがない。思いあたるのは配合タンパクのみだ。
 夫婦が、この健康補助食品が視力障害の元凶だと思いこんだのもむりはなかった。
 二人は、高い金をはらって目を悪くしたことに腹をたてて、それをすすめた男にねじこんだ。男は平身低頭して、損害賠償を申しでなければ老眼鏡のならないところまで追いこまれた。賠償となれば老眼鏡の値段ではすむまい。そうなれば、専門医の意見を参考にする必要がある。セールスマンは、夫婦を眼科医のもとにつれていった。
 そこまでの話はおもしろいものではない。ところが、眼科医の診断の結果は、意想外の展開となった。めがねが合わなくなったのは、目が悪くなったためではなく、老視がいくぶん回復した結果だったのである。夫婦は大いに喜んで、セールスマン氏にお礼の菓子折りをとどけた。
 このエピソードからわれわれは何を学ぶことができるだろうか。 食事にタンパク質を追加することによって老視が回復したという事実が、ここにある。すると、この夫婦の老視は、日常の食生活におけるタンパク質の不足からきた、と考えるべきであろう。
その不足が解消したから、老視も解消した、という論理だ。
 このエピソードの教訓として、すべての老視はタンパク質の不足から、という結論を導きだしては行きすぎた。ここに見る現象のなかに、そのような因果関係はふくまれていないはずだ。ただ、この夫婦の場合、その老視がタンパク質不足からきたことは、まちがいないだろう。
 このような現象が、この夫婦だけに奇跡的におきた、などと考えるわけにもゆかぬ。ただ一般的に、タンパク質不足からくる老視の部分がある、と考えるのは正しい。

【動き出した半身不随の手足】
 東京のあるところに、70歳になる老人がいた。この老人は、5年前に脳卒中をおこして、半身不随になった。余裕のある家庭のこととて、病人は聞きこみにまかせて、あらゆる医者の門をたたいた。いわば、現代医学の粋をつくす医療をうけた。リハビリテーションにかける熱意も最高であった。
 この至れりつくせりの手当てもかかわらず、半身不随はどうにもならない。けっきょくそれは死の床までもちこまれる病気だと、本人もあきらめ、周囲もあきらめるありさまであった。これは何もめずらしい出来事ではない。むしろ、社会のあちらにもこちらにも見られる、いわば日常茶飯の出来事であろう。
 あるときのこと、老人の娘が配合タンパクをもたらした。老人はすでに、そんなものに期待をかける状況にはない。愛する娘の好意を無にしては寝ざめの悪いことと、まったくの義理から、配合タンパクに手をだした。あまりうまいものではなく、それはむしろ迷惑なしろものであった。それを娘は、毎日30グラムも40グラムも食わなければならないようにいう。味がよくないうえに、くさいガスがやたらにでる。老人は娘のために悲壮な覚悟をしてがんばった。
 ここまでは、一つの美談のスタイルの話である。ところが、これは美談のわくを飛びこえることとなった。老人のいうことをきかなかった手足が、少しずつ動きだしたのだ。いうことをききだしたのだ。老人はすっかり喜んだ。配合タンパクにかける期待は日ごとに大きくなる。娘が満足したことは、いうまでもあるまい。
 配合タンパクに手をだすようになってから半年たったとき、半身不随はかけらもなくなっていた。老人は以前から車マニアである。週末には伊豆の別荘までドライブするのが楽しみだった。それが、復活したのだ。
 半身不随から立ち直った老人は、以前と同じように、自分でハンドルをにぎって、伊豆の別荘へのドライブを楽しんでいる。
 さて、ここでの教訓は何だろうか。まず、半身不随という名の神経障害に、タンパク不足が結びついていたということだ。そしてまた、残念なことであるが、あらゆる“名医”が、それを指摘しなかった、ということだ。これら二つの挿話は、たぶん、われわれの常識のなかにおさめておくべき情報だろう。

【解消したムーンフェース】
 こんどは、北海道に住むある中年婦人の場合である。
 彼女は、全身性エリトマトーデス患者であった。この病気は、自己免疫病、もしくは膠原病の一種であって、不治の難病とされている。この中年婦人の場合、顔には紅斑性狼瘡ができていた。それはその名のとおり、狼に食いちらされたかのように、顔面に紅斑ができ、それがくずれて潰瘍になっている。それだけならよいが、上下のはげしい高熱がつづくことがあり、関節痛がひどく、その病態は相当なものであった。
 この中年婦人はむろん医者の厄介になっている。発作がくればお定まりの副腎皮質ホルモンの大量投与だ。それ以外に対策がないのだからしかたがない。副腎皮質ホルモンの名前はコーチゾン(ヒドロコーチゾン)だが、ステロイド(ステロイドホルモン)とよばれることが多い。
 ステロイドの効果はあらかたであるが、副作用がまた強烈である。手足の筋肉がやせ、首から上に皮下脂肪が蓄積して、いわゆるムーンフェース(満月顔)になる。それは体裁上のことだからがまんできるとしても、全体的に体調がくずれる。この中年婦人は、すでにムーンフェースになっていた。
 彼女は、めったに外出することがない。しかし、家庭婦人ともなれば、家事の最低限度の外出はある。彼女を路上で見かけた人は、それが病人であることを見のがすことはない。彼女は、自他ともに病人であることにひたりきって、不治であることを覚悟していた。
 どんなきっかけか、彼女はあるとき配合タンパクに手をだした。その心の隅には、どこかにすがるべきわらがある、というかすかな望みがあって、配合タンパクを見たとき、それをそれと思ったのだろう。
 彼女をさいなんでいた全身性エリテマトーデスは、配合タンパクの前に、あっさりかぶとをぬいだ。一日に40グラムの良質タンパクの摂取を25日間つづけただけで、この難病はケロリとなおった。
 びっくりしたのは、家族ばかりでなく、近所の人たちである。二目と見られない顔をして、病院の廊下を歩くような歩き方しかできなかった病人が、きれいな顔にもどってさっそうと歩くのを見ては、びっくりしないほうがどうかしている。
 さて、この全身性エリテマトーデス患者の場合から、われわれが学ぶべきものは何だろうか。
 まず第一は、この病気がタンパク質不足からきたのではないか、という疑問をぶつけられたことである。この病気については不明な点が多く、約30%の患者に自然治癒が見られはするが、その機序がわかっていない。もし彼女の場合を医師が自然治癒と見るならば、われわれは、全身性エリテマトーデスを自然治癒にみちびく方法を一つ知ったことにな
る。
 そんな経験主義はこまるというような批判もあろうが、それについての私見は、第IV章にゆずる。

【三石巌 高タンパク健康法(絶版)P18~P25より抜粋】

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