基礎から学ぶビタミンEー14.筋ジストロフィー、筋萎縮症とビタミンE1

三石巌:全業績7、ビタミンEのすべて、より
 
 骨格筋にとってビタミンE1がいかに大切かということは、動物にビタミンE1欠乏食を与えてみればわかる。ウサギの場合、「筋ジストロフィー」をおこして、三週間以内に死んでしまう。ジストロフィーとは、栄養障害のことである。
 ビタミンE1は、我々人間の場合にも、筋ジストロフィーを防いでくれる。この病気にかかった人は、治療のためにビタミンE1が与えられる。
 ニワトリでもウサギでも、ビタミンE1欠乏食を与えられると、まず、歩けなくなる。このとき、筋肉の分解物が尿にあらわれる。
 筋肉のタンパク質はレシチンに守られている。ビタミンE1のような抗酸化物質がそこにないと、ミクロゾーム膜その他にあるレシチンが自動酸化をおこす。そこに発生した脂肪酸ラジカルがリゾゾームを攻撃し、そこからでてきたタンパク分解酵素が筋肉を分解するのが筋ジストロフィーの発症メカニズムだと考えられている。リゾゾーム酵素の活性のためには、そこの環境は乳酸によって酸性化していることが必要条件になる。
 リゾゾームの最も多い器官は肝臓および脾臓であって、筋肉はこれのとくに少ない器官とされている。ところが筋肉に、きわめて高い濃度のリゾゾーム酵素が発見される場合がある。それは、筋萎縮を起こしたウサギでの所見であった。そしてこの筋萎縮症は、ビタミンE1欠乏食を与えて、人工的に起こしたものであった。
 その系統の動物実験は、多くの人が試みて、それ相応の成果を見ている。ビタミンE1欠乏食を与えられたラット、ウサギ、ヒツジでは、いずれも心臓障害が観察されている。心臓は筋肉で作られた器官であるが、その筋肉は、萎縮、変性ないし壊死を起こしていた。子牛の場合には、しばしば突如として心臓死をおこすという。
 これらの実験動物のデータは、ビタミンE1欠乏による筋萎縮が人体にもありうることを示唆している。それは難病の一つである筋萎縮症患者に一筋の光明を与えるであろう。この病気の原因として、タンパク質およびビタミンE1の欠乏を、私は想定している。
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好気性解糖主導の赤筋のエネルギーは遊離脂肪酸とグリコーゲン。
嫌気性解糖主導の白筋のエネルギーはクレアチンリン酸。
E1が不足するとクレアチンリン酸を筋肉内に維持できず、尿中に流出してしまう。

筋ジストロフィー、筋萎縮症、心筋障害などの筋疾患の治療にはE1。
レシチンを加えるとさらに良いはず。
心疾患には上記に加え、セレン、CoQ10。

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