基礎から学ぶビタミンE-8.動脈硬化、脳梗塞とビタミンE1(d-αートコフェロール)

三石巌:全業績7、ビタミンEのすべて、より

 さて、動脈硬化の正体は何であろうか。それとコレステロールとは、いかなる関係にあるのであろうか。コレステロール以外にも、なんらかの因子が存在するのであろうか。
 カルシウムといえば、それが骨や歯に集中的に沈着している元素である。これがよその部分に沈着するのは正常でない。ところが、硬化した動脈壁には、しばしばカルシウムが沈着している。これがまた、ビタミンE1によって追い出されるのだ。ついでにいえば、老人の腎臓には、とかくカルシウムの沈着がみられるが、これもまたビタミンE1によって追い出すことが知られている。
 動脈に沈着したカルシウムは、硬化の主因ではなくても、大局から見て、それは好ましからざる変性といわざるをえない。老化の指標として過酸化脂質ないしリポフスチンをとることが許され、しかもなお、カルシウムの沈着が過酸化脂質、リポフスチンの沈着量に比例するという事実があったとするなら、動脈壁や腎臓のカルシウムが、何らかの形でこれらの老化物質に結合していることが予想される。
 このような脈絡をたどることが許されるならば、過酸化脂質ないしリポフスチンの分解を助けるビタミンE1に、動脈壁や腎臓に沈着したカルシウムを追放する作用があって当然、という論理になるだろう。
 さて、動脈硬化につきもののように登場するコレステロールについては、どう考えるべきであろうか。この問題をとくにあたっては、動脈の硬化が、動脈の弾力低下の意味、と解する必要がある。
 遊離コレステロールが生体膜正常化のために必要な構成成分であるのに対して、コレステロールエステルが沈着物に過ぎないことを理解する必要がある。
 コレステロールエステルは、膜の弾力性を低下させる物質の一つであろう。ビタミンE1の効果は、膜を構成するリン脂質の自動酸化の防止にある。自動酸化によって生じた過酸化脂質は、周囲のタンパク質と結合して膜の弾力を低下させるのであろう。
 硬化した動脈にコレステロールエステルの沈着が見られるのは事実であるが、この沈着量と血中コレステロール値とは無関係であることも事実である。コレステロール伝説は、すでに引導を渡されたのだ。
 不幸にして動脈が硬化すると、さまざまな障害が潜在化し、あるいは表面化する。弾力を失った動脈では、心臓の収縮期の血圧が異常に高くなる関係上、太い血管のなかでは血流速度が大きくなる。このことは、脈波速度の増大という現象にもあらわれている。
 一般に、血液のような流体が管の中を流れる場合、管壁とのあいだの粘性抵抗は速度に比例する。したがって、硬化した太い動脈を流れる血液は、大きな抵抗に出会う。その関係上、血圧の高いことは、全身を血液が循環する時間を短縮することにはならない。高い血圧をつくるために、心臓に余計な負担がかかるばかりであって、骨折り損のくたびれもうけの形になる。要するに、血圧が高いからといって、血行が良くなるわけではないということだ。
 さらに良くないことは、動脈硬化がある場合、血中に過酸化脂質があり、また、粘質多糖体とよばれる化学物質が管壁から分泌されるという二点である。結局、両者のあることによって、血液は二重にねばついてくる。
それらを総括すると、動脈硬化はただちに血行障害を意味するとしてよい。事実、動脈硬化との診断をうけ、何の症状もないのい医師にかかっていた人が、突如として何かの病気になるケースがめずらしくない。
 ビタミンE1といえば、その抗酸化作用にまず注目しなければならないが、これによって不飽和脂肪酸の自動酸化が抑制をうけ、したがって、過酸化脂質の生成が不可能になるという論理は、すでに読者諸君の頭に定着したことと思う。
 これについて、ここに二つの具体例を示す。第一は、ビタミンE1含有量の低い飼料をウサギに与えると、アテロームが発生するという事実である。第二は、31歳から91歳までの人の大動脈解剖所見によると、アテロームの程度と動脈壁中の過酸化脂質の量との間に、きわめて高い相関関係が存在するいう事実がある。
 これらの知見をにらみあわせるとき、ビタミンE1がアテロームに、したがって血栓症に、したがってまた、脳梗塞、心筋梗塞の予防に対して、ほぼ決定的な役割を演じると考えざるをえなくなる。
 脳卒中には、脳梗塞と脳出血の二種の原因があるが、この、日本で死亡率第二位にある病気の一つが、ビタミンE1によって完全に予防できるといえるのである。
 大動脈の老化過程では、管壁へのカルシウム沈着がしばしばおこる。この”石灰化”がビタミンE1によって改善されるという事実も確認されている。
 脳梗塞の多発は、食品加工のゆきすぎのために、ビタミンE1の含有量が低下したことによるとの説も、傾聴に値しよう。
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動脈の硬化は、動脈の弾力低下の意味。
ビタミンE1の効果は、膜を構成するリン脂質の自動酸化の防止にある。
自動酸化によって生じた過酸化脂質は、周囲のタンパク質と結合して膜の弾力を低下させる。
動脈硬化、動脈壁への異所性カルシウム沈着はビタミンE1で改善できる。
ビタミンE1にて血中の過酸化脂質を除去することにより、血液の粘度を下げ、血流を改善させる。
ビタミンE1がアテロームに、したがって血栓症に、したがってまた、脳梗塞、心筋梗塞の予防に対して、ほぼ決定的な役割を演じる。


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