事業を繁栄させる奇策はない。しかし、かなり確率の高い道はある。それは「ダントツ・ナンバーワンのポジション(市場における地位)を獲得できる分野に集中する」ことである。セグメント会計で事業別の損益(過去の実績)をはじき出し、儲かっているかどうかを明らかにし、改善策を講じることは重要である。しかし“結果”として儲かっているか否かという尺度だけで「選択と集中」を判断することは危険だ。他社に簡単にマネのできない自社の強みを活かして、先行企業のいない成長分野においてダントツ・ナンバーワンとかオンリーワンの市場ポジションを獲得することが選択と集中の本質なのだ。

多くの企業にとって、世界一や日本一、また業界ナンバーワンといったポジションを狙うことは難しいかもしれない。しかし、顧客、製品、サービス、地域、業務活動分野、ビジネスモデル・・・・・・小さく分けて見て行くと、力相応に一番になれる可能性の高い分野があるはずだ。それを見つけて、持てる力を分散させることなく、全力を集中させる。ここに事業を伸ばす極意がある。

世界で一番高い山がエベレストであることは誰しも知っている。しかし、二番目に高い山の名前ゴドウィンオースチンを知っている人がどれだけいるだろうか。ホームラン王といえば王貞治さんだが、二番目を知る人は少ない。一番以外は人の記憶に残らない。ビリ同然なのだ。

また一番には“最初”という意味もある。最初という意味は極めて重要だ。複写機はゼロックス、セロテープはスコッチテープ、付箋はポスト・イット、宅配便は宅急便、温水洗浄便座はウォシュレット・・・・・・と、最初に顧客の心に入り込み、顧客を創造した会社のブランドや商品名が、その商品の代名詞になってしまう。こうした商品の圧倒的なシェアをひっくり返すのは至難の技である。これから様々な分野で益々寡占化と二極化が進む。二番手以降のポジションに甘んじていると十分な利益の確保が難しくなる。

一番の企業は、その分野で象徴するシンプルな言葉を、顧客の心に刻み込むことに集中し、成功している。セコムと言えば安全、グーグルと言えば検索エンジン、アイフォンと言えばスマホ、ベンツといえば高級車、そしてオタフクといえばお好み焼きソース(関西では定番)というように。