「あぁ、なるほどね。」
してやられたのかと、ニヤリとしてしまう映画。
ネタバレと雑感です。
少し古い1998年の映画で、トニー・レオンと羽田美智子が主演。
清朝末が舞台の、小説『海上花列伝』を日本と共同製作で映画化。
全て室内で展開され、ほぼ1シーン1ショットで撮られている。
仄暗く妖しいアヘンが煙る、娼館の部屋。
もう一部屋は、高級官僚らが毎夜遊びに来る飯店らしい。
時々、女将の部屋など、視点が部屋ごとに変わる。
設えや衣装、宝飾品に目が行っちゃう
【ネタバレのあらすじ】
5年来の馴染みで高級娼妓の小紅(中国人役・羽田美智子)は、広東省出身で高級官僚の王さん(トニー・レオン)しか客を取らない部屋持ち。
日本語訳では、「身請け」「結婚」だが、妾・第二夫人としてだ。
この王さん、上海人から見ると田舎者のよう。
独身の官僚の王さん(分かりづらいから、以下トニーで)も周りも、なぜ小紅が身請けを受け入れないのか理解できない。
「あの二人(客と娼妓なのに)ずっと見つめあっていたよ。」なんて飯店の金持ち仲間に笑われる程の相思相愛なのに。
「借金があるから」が、断る理由らしい。
一人しか客を取らないなら、借金は減るわけない。
だから、ひっくるめて身請け話なのに。
当時の日本も上海も流儀として、馴染みの客と娼妓はこの空間では夫婦。
他の店や娼妓に手を出せないルール。
トニーはご法度の若い子に手を出すが、乗り換えるつもりもない。調子に乗った男
アァ、お坊ちゃん育ちなのか、流儀に反した負い目なのか、ばれちゃって不機嫌な小紅のご機嫌取り。
でも、身請けはお断り
ある日、トニーが泥酔し、娼館の小紅の部屋へ。
女将が対応しながら、
「小紅は下かしら」なんてすっとぼける。
トニーがソファにクタっと座り、意味もなく隣のソファに移り、グデ〜となる。
何とも酔っ払いそのもの!!名優だわね
ウチでよく見たわ〜
少し前に、女将が赤い帽子を手に下がる。
トニーは酔っていて気づかず。
弁髪に冠る、赤い男物の帽子‥
急に小紅はどこかと、トニーはウロウロ‥
この壁の向こう?
下側から覗くと、男だ!!
暴れるトニー。
そりゃそうだよ、間夫だ。間男(まおとこ)ではない。
女将も承知の、間夫がいた訳だ。
妾だけれど娼妓にとっては有難い話を蹴ってきた理由が、バレたんだもん。
一人きりと乗せられ、お金も使い、旦那を務めてきたのにね、トニー。
なるほど
小紅… 家族を養わなければならない身
間夫の役者… お金がなく、身請けは出来ない
官僚のトニーに身請けされたら、借金は帳消し、家族に少しは仕送りが出来るだろうが、間夫には会えない。
小紅と女将は、姑息な両立する手を使っていたんだなぁ。
ほら、上海人が田舎者で純情な素人相手だもの
江戸の娼妓が浅葱裏にした、他人の小指を渡した“ゆびきり”と変わらない。
信じた男がなんとも‥
トニーは、手を出した若い娼妓を妾に取った。
小紅は娼妓を辞め、お屋敷に一人住まいらしい。
その後、トニーは妾に裏切られ、独り転勤。
小紅は、お屋敷から小さな住まいに移ったらしい噂だけで、詳細不明‥‥ と女将とお客の会話。
間夫と二人、仲睦まじい様子が映る。
ほほ笑む小紅‥
【 終 】
高級官僚のトニーは、きっと田舎のいいとこの坊ちゃんで、お勉強も出来たんだろうな。
手練手管ってヤツだね。
これって、江戸時代の太夫なんかと同じ手だよね。
毎月の支払いがされたら、娼館はいいんだから。
女は、お金のない間夫一筋。
金払いのいい純情な“旦那”を一人確保すれば、他の客を取らなくて済む。
何も知らなければ旦那は、それはそれで幸せ。
最後に、どうやって小紅が廃業出来たのか。
バレる前に、他の常連とトニーの会話で「他の娼妓を妾にするのに、5年もの馴染みの小紅をほったらかすのはどうなんだ?」とあった。
トニーと小紅の面子を保つ為に、何かしらしないとと、諭されていた。
間夫の件を知ったが、自分の面子の為に借金を精算してやったのだろう。
上海人の飯店のお仲間たちに、笑われちゃうもんね。
小紅と間夫が、仲睦まじい?
女将が「小さな住まいに越して、一人でどうしているのやら」とセリフがある。
娼館では、小間使い代わりの見習いが付いている。
男手も、女将もいる。
無問題!
間夫はお粥を食べ、小紅はアヘンの煙管を掃除しているシーンが、その答え。
贅沢な部屋持ちだった娼妓が、お粥を間夫に作る時間が、幸せそのもの。
苦であるはずがない!
はぁ〜トニーたら、可哀想に
いや、王さんだった
小紅の一人勝ちだね
娼館の女将もさすがだ
どのシーンでも羽田美智子さんが美しい!
中国語の吹替が羽田さんぽい声だし、自然。
劇中の王さんと小紅のみ、広東語だった、と。
王さんは田舎モンで見栄っ張りな官僚で、小紅は同じ広東出身でありながらお商売に染まり切ったオンナの表現なんだろう。
ちょっと習慣などを知らないと、セリフで全てを説明しないから分かりづらいかも。
最後が「なるほどね〜」な面白み。
ちょっとご紹介したくなった映画だった。