週明けの債券市場で、日本の長期金利(10年物国債利回り)が1.720%に達し、約17年半ぶりの高水準となった、というニュースが大きく報じられました。特に、記事は「高市内閣が掲げる拡張的な財政政策が財政悪化につながるとの懸念から国債が売られ、金利が上昇している」と、金利上昇の主因を特定の政権の財政政策に強く結びつけています。
しかし、冷静に世界の金利水準と比較してみると、この報道が財政悪化を過度に煽りすぎていることがわかります。
1. 他先進国との圧倒的な金利差
まず、日本の長期金利1.720%を、主要先進国と比較してみましょう。(※データは直近の情報に基づきます。)
ご覧の通り、日本の長期金利は17年半ぶりの高水準とはいえ、いまだに米国や英国の半分以下、ユーロ圏の中心であるドイツと比べても1ポイント近く低い水準にとどまっています。
先進国の中央銀行の多くは、高インフレに対応するため、政策金利を大幅に引き上げてきました。その結果、市場金利も連動して上昇し、長期金利が4%〜5%台になるのは世界的な「ニューノーマル(新しい常態)」です。
2. 金利上昇の本当の理由:「金融正常化」と「インフレ期待」
日本の金利上昇の背景には、高市氏の財政政策「懸念」よりも、もっと構造的な要因があります。
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日銀の金融政策修正の観測: 日本でもインフレ傾向が定着しつつあり、日本銀行(BOJ)が長年続けてきた大規模な金融緩和を徐々に修正し、正常化に向かうという市場の観測が、金利に上昇圧力をかけています。これは「良いインフレ」と「金融政策の正常化」の兆候であり、必ずしも財政破綻の予兆ではありません。
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グローバルな金利上昇の波及: 世界的な高金利環境から、日本の国債利回りにも海外投資家からの引き上げ圧力がかかっています。
もちろん、大規模な財政支出は将来的な財政健全化の必要性を高めますが、今回の1.720%への上昇は、世界的な金利水準から見て「異常」でも「危機的」でもありません。
3. 結論:過度な「財政危機」報道に惑わされないために
この記事は、金利が「17年半ぶり」という事実と、政権交代というタイミングを捉え、センセーショナルな見出しで「財政悪化の懸念」を強調しすぎています。
日本の金利が1.720%で「財政破綻懸念」なら、金利が4%を超える米国や英国は一体どうなるのでしょうか?
私たちは、特定政権の政策批判に終始する報道ではなく、金利の動きを世界的な金融・経済の文脈の中で冷静に捉える必要があります。日本の金利は、ようやく「正常な水準」に向けて動き始めた、と解釈すべきでしょう。


