映画鑑賞文/「オッペンハイマー」 ノーラン監督渾身の傑作 | たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

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クリストファー・ノーラン監督作品「オッペンハイマー」を(今さらながら)劇場で鑑賞。日本での劇場公開は2024年3月。第96回アカデミー賞で7部門を受賞した話題作である。

 

 

日本での劇場公開は20204年3月だが,全米公開は2023年7月である。「原爆の父」と呼ばれたオッペンハイマーを題材にした作品なので,世界で唯一の被爆国である日本での公開に際して配給元が慎重になったが故の「8ヶ月の時差」なのだろう。

 

実際,日本においては「原爆被害者の視点が欠けている」あるいは「原爆の悲惨さが描かれていない」等という批判があるが,そのような批判ままったくの的外れだというのが,この作品を見たうえでの率直な感想である。この作品は原爆がテーマのドキュメンタリーではないし,そもそも原爆の賛否を問うたものでもない。あくまでもオッペンハイマーという一人の天才科学者の原爆開発に焦点が当てられたエンタメ作品である。それなのにこの作品を広島の被爆者やその家族に見せて「どう思うか」と感想を迫るのは筋違いだし,品のない焚きつけあるいは炎上商法とさえ言えるだろう。

 

フラットな目線で鑑賞することが大切だ。そうすれば,ドキュメンタリータッチのエンタメ作品として本作は非常に見応えがある作品であることに容易に気づくだろう。オッペンハイマーのカリスマ性とエキセントリックな言動,物理学者としての突出した才能,原爆開発に対する圧倒的な情熱。そして大量殺戮兵器を開発してしまったことに対する深い苦悩――。そのあまりにもドラマティックな生き様に,強く惹きつけられた。

 

豪華な俳優陣も見逃せない。主役のキリアン・マーフィーは言うに及ばず、エミリー・ブラント,マット・デイモン,ロバート・ダウニーJr.,ケネス・ブラナー,ジョシュ・ハートネット,ジェイソン・クラーク……。いったいギャラだけでいくらになるのだろう。超豪華な俳優陣が,それほど派手に目立つわけでもない地味な役どころを熱演しているからこそ,迫力ある作品になったのだろう。

 

鑑賞後,いろいろと振り返ってみて最も強く思ったこと。それは,この作品をヒステリックに批判する人たちも怖いが,実はもっと恐ろしいのは,科学技術の発展により実現された新技術を何でも利用しようとする強欲な政治家たちだということである。