2024年本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく成瀬は天下を取りにいく』の続編,『成瀬は信じた道をいく』(宮島未奈著,新潮社,2024年)を読了。
成瀬あかりの規格外の言動はそのままに,各エピソードの内容が“成瀬抜き”でもかなり面白くなった。そこに成瀬という劇薬が加わるから,物語はより魅力的になっていると思う。
どのストーリーも楽しいが,年頃の娘を持つ成瀬父の動揺っぷりが身に染みる「成瀬慶彦の憂鬱」や,インスタデビューした成瀬の様子が新鮮な「コンビーフはうまい」の2編が特に面白かった。最後を飾る「探さないでください」はそれまでの4編で成瀬と関わってきたキャラが総登場しており,その“アベンジャーズ感”が最高に楽しい。
成瀬あかりは書名にその名を刻む主人公なのに,それぞれの物語では必ずしも(その強烈な個性の割に)前面に出てくるキャラではない。さりげなく登場しては,その常識離れした言動で人々を魅了し,その人たちに「自分の生き方」を考えさせてしまう点は,成瀬あかりの偉人っぷりを物語っていると思う。成瀬と行動を共にする“成瀬の周辺の人々”の視点で読者もまた成瀬あかり史の目撃者となり,前を向いて人生を歩もうと決意を新たにするのだ。
▼仕事で訪れた都内の書店。入口を入るとすぐの所に特設コーナーが。