読書感想文/三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖IV 〜扉子たちと継がれる道〜』 | たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

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三上延の『ビブリア古書堂の事件手帖IV ~扉子たちと継がれる道~』(メディアワークス文庫,2024年3月)を読了。

 

 

○あらすじ(本書の表4より)

 まだ梅雨の始まらない五月の終わりの鎌倉駅。よく似た顔立ちだが世代の異なる三人の女性が一堂に会した。
戦中、鎌倉の文士達が立ち上げた貸本屋「鎌倉文庫」。千冊あったといわれる貸出本も発見されたのはわずか数冊。では残りはどこへ――夏目漱石の初版本も含まれているというその行方を捜す依頼は、昭和から始まり、平成、令和のビブリア古書堂の娘たちに受け継がれていく。
 十七歳の「本の虫」三者三様の古書に纏わる物語と、時を超えて紐解かれる人の想い。

『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズはその名の通りビブリア古書堂という古書店を営む店主が古書をめぐる謎解きに挑むミステリーだ。『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』から『ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~』までの7冊はいわば「シーズン1」で,主人公はコミュ障気味の若き女性店主・栞子。その栞子と同店のアルバイト店員・大輔との恋模様も交えながら物語が進んでいく。その後発売された『ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~』から『ビブリア古書堂の事件手帖III ~扉子と虚ろな夢~』までの3冊は「シーズン2」で,主役の座は栞子の娘である高校生・扉子に引き継がれる。本作はそれに続くIVなので,主人公は当然扉子だと思ったのだが……。

いざ読んでみたら,今までとはやや毛色が異なる作風だと感じた。時間軸が現在と過去を行ったり来たりしつつ,栞子,扉子に加えて栞子の母・智恵子を交えた3世代にわたる謎解き物語は,壮大な回顧録あるいは回想録のよう。従来のような古書にまつわる分かりやすい謎解きミステリーでもなければ,キャラが立ったラノベ的色合いの濃い物語でもない。ありきたりな表現になるが,作品自体が“大人”になったように思う。しっかりと読ませるエンタメ作品だ。

本作はこのシリーズのヒロインと言っていい3人が時間を超えて総登場する豪華仕様なので,作者はいったい次作をどう料理するのだろうと思わず余計な心配をしてしまう。今までのようなスタイルに戻ってしまったら,作品がこじんまりとしてしまうのではないだろうか。期待と不安が相半ばという状態ではあるが,自作を楽しみに待ちたいと思う。