読書感想文/『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』 | たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

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キム・リゲット著『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』(早川書房,2022年11月)を読了。

 

 

ハンガー・ゲーム』のような話だった。ただし過酷な環境からの脱出劇という点は似ているが,『グレイス・イヤー 少女たちの聖域』は派手な戦闘ものではない。

 

目に見えない何かが原因になって少女たちの精神が徐々に蝕まれていき,集団の中で狂気がじわじわと浸透していく様は,まるでスティーヴン・キングの小説のよう。超自然的な現象やホラーっぽさを思わせる描写が織り交ぜられているところや,襲いかかる圧倒的な狂気に対して主人公の少女がボロボロになりながら懸命に抗う点もキング小説に似ている気がする。全体的にどろどろしていて生々しく,思わず目を背けたくなるような残酷さがにじみ出ている点が強く印象に残る。

 

女性というだけで無言のうちに課せられる様々な制約や差別,偏見と徹底的に戦う小説であり,そのような理不尽な立場に追いやられ,抑圧されているすべての女性を奮い立たせる物語でもある。訳者あとがきに「フェミニズム・ディストピア小説」という表現が出てくるが,まさにその通りだと思う。想像の斜め上をいくラストも感動的だ。