スティーブン・キング原作の『炎の少女チャーリー』をAmazon Prime Videoで鑑賞。日本での劇場公開は2022年6月。1984年にドリュー・バリモア主演で一度映画化されている。
人体実験により特殊能力を身につけた両親のもとに生まれ,自らも発火能力(パイロキネシス)を持つ少女チャーリーの苦悩と,チャーリーを軍事利用しようとして一家を追う研究機関からの逃走劇を描いている。
原作は読んだことがあるものの,かなり前のことなのでストーリーはほぼ覚えておらず,新鮮な気持ちで観ることができた。
そこそこスリルもあったし面白かったが,チャーリーが“覚醒”する過程の描写が甘い点が気になった。最初はパイロキネシスをうまく制御できなかったのに,組織への反撃を試みているうちにいつの間にかある程度完全に制御できるようになったのはあまりに安易だし,そもそも自分の能力に戸惑っていたのも初期段階だけというのも不自然。
母親は追手により殺され,父親は拉致された上にやむなく敵もろともチャーリー自身が焼き殺すという悲劇が“覚醒”の契機だったということなのだろうが,持て余していた自分の力を自らの支配下に置き,制御できるようになるのは並大抵のことではないはず。そうすることができるうようになるまでのチャーリーの心理的葛藤や努力の過程をもっと丁寧に描いていれば,一人の少女の成長物語としての深みも出たのではないかと思う。
ちなみに,キング原作の似たような設定の小説に『キャリー』がある。クロエ・グレース・モレッツ主演で2013年に映画化されているのだが,テレキネシス(念力)という特殊能力を持つ少女の苦悩と,“覚醒”した少女による街の大破壊を描いたスケールの大きな作品だ。物語の深みという点でも,スケールの大きさという点でも,残念ながら『炎の少女チャーリー』は『キャリー』には及ばないと思う。

