TITANS OF CREATION / TESTAMENT
2020年4月発売
大ベテランのスラッシュ・メタル・バンドTESTAMENTが放つ12thアルバム。
懐古主義に走ることなく,かとってトレンドにおもねることもなく,ただひたすらに己の信じるヘヴィ・メタルを徹底的に追求する姿勢に脱帽だ。1987年に1stアルバム「THE LEGACY」をリリースしてから33年になるが,いわゆるベイエリア・スラッシュと呼ばれるサウンドを軸に据えながら,スラッシュ・メタルという枠組みを大きく超えて今なお進化し続ける姿は驚嘆に値する。
このアルバムは,前作「BROTHERHOOD OF THE SNAKE」の作風を踏襲した,徹頭徹尾ピュアなヘヴィ・メタルで貫かれている。客観的にみて速いわけではないが,体感的には速さを感じる曲が満載。グイグイと力強く前進する力は凄まじく,その推進力,突進力は凡庸のメタル・バンドのはるか上を行く。進化し続ける大ベテランの面目躍如だ。
どの曲も迫力満点で,単調さは皆無。ギターのリフ・ワーク,リズム,曲構成はどこまでも凝っていて,細部に至るまで徹底的に作り込まれている。サウンドはどこまでも重く,重心はとことん低い。スラッシーでありながらメロディアス。TESTAMENTにしか生み出せないサウンド,唯一無二のヘヴィ・メタルがここにある。誤解を恐れずに言うならば,多くの人がヘヴィ・メタルと聞いて連想するサウンドは,もはやMETTALICAではなくてTESTMENTなのではないか。
この迫力満点のTESTAMENT流ヘヴィ・メタルを象徴するのは,チャック・ビリーのヴォーカルだ。デス・ヴォイスでもなくガテラル・ヴォイスでもない野獣のような咆哮は,不思議とエモーショナルでもある。たとえば09“The Healers”で聞かれる,地の底からせり上がるような重量感あるチャックの声は,迫力があって悪魔的ですらありながら,きちんと〈メロディーを歌っている〉と認識できる。TESTAMENTの曲が攻撃的な超重量級のメタルでありながら,それと同時にドラマティックでメロディアスに感じられる理由のひとつは,間違いなく彼のヴォーカルにあるのだ。
【収録曲】
01 Children Of The Next Level
02 WWIII
03 Dream Deciever
04 Night Of The Witch
05 City Of Angels
06 Ishtar's Gate
07 Symptoms
08 False Prophet
09 The Healers
10 Code Of Hammurabi
11 Curse Of Osiris
12 Catacombs