演劇の演出で108時間眠らなかった女優が体験する恐怖を描いた『108時間』を鑑賞。2018年に公開されたアルゼンチン・スペイン・ウルグアイの合作。日本では2019年4月に「未体験ゾーンの映画たち2019」という企画で一部の劇場で公開された。
108時間も眠らずに起き続けていれば精神に(というか脳に)支障をきたすことは誰にだって分かる。本作のキモは、劇団での役作りとして108時間の断眠が導入されていることと、劇を演じる舞台がいわくつきの閉鎖された精神病院であるということ。主人公の身に降りかかるさまざまな怪異が、はたして断眠によるもの=幻覚・フェイクなのか、それとも場所柄ゆえの心霊現象なのかが判然としない。そればかりか、一連の出来事のどこまでが演出(演技)によるものなのということの境界も曖昧だ。現実と妄想(幻覚)と演技が渾然一体となって織りなすある種の狂気。観終わると非常に不思議な感覚にとらわれる作品だ