読んだ本の数:2冊
読んだページ数:830ページ
ナイス数:15ナイス

舞台設定は近未来SF的だが,ストーリーは中盤あたりから一気に哲学的思考を深めていく。これは明らかに著者が置かれた境遇と関連している。本書は著者が入院中に病院で執筆された。この時,著者はおそらく確実に自分の死を意識しながら書いたのだと思う。「病気で死ぬことがない世界」という設定は如実にそのことを物語っているし,「意識が消滅し,平板化する」ことで「人類がとても幸福」になるとは,つまり「人は新で幸福になれる」とも読み取れる。苦痛に苛まれる肉体から解放されたいと願う著者の魂の叫びがあるように思えてならない。
読了日:9月23日 著者:伊藤計劃

この小説はいったい何なのだろう。 軍隊もの? スパイ小説? 現代にとても近い極近未来を描いたディストピア小説? それともミステリー? 実になんとも不思議な読後感。 人工筋肉を用いた旅客機。 ナノテクを駆使した網膜ディスプレー。 痛覚麻痺。 超高度に発達した人物認証システムと追跡システム。 今はまだ実現していないし実用化もしていないけど、とてもあり得そうな様々な設定が妙なリアル感を醸し出す。 それにしても、結局のところ「虐殺文法」とは何だったのか。それが非常に気になる。
読了日:9月12日 著者:伊藤計劃
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