たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

たろの超趣味的雑文日記〜本と映画と音楽とBABYMETALその他諸々

趣味的なことを中心に,いろいろと思ったことを徒然なるままに語ります。映画/本/スポーツ/世の中/旅行/音楽(ヘヴィ・メタル)/BABYMETALなど。

ジェームズ・キャンメロン監督作品『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』を公開翌日に劇場にて鑑賞。シリーズ3作目。

 

 

2009年公開の1作目を鑑賞したときに抱いた「実在する異世界/異文明のよう」という印象は本作でも不変。壮大なサーガに終始圧倒されっぱなしの197分だった。

 

色彩豊かな惑星パンドラの情景と,勇猛果敢でありながら愛と博愛の精神に満ちたナヴィの生き様は,もはや神話である。あたかも古代ギリシャの英雄叙事詩や神話伝説を読んでいるような感覚になる。その意味では強烈なリアリティを伴った作品であるとも言える。

 

物語の基本軸は前作と大差がないと言えば大差がない。舞台は惑星パンドラ。そこに住むナヴィと,パンドラを侵略しようとする人間(人類)との戦いを描いている。

 

ナヴィは自然と生命に対する畏敬の念を持ち,自分たちは植物の神経ネットワーク“エイワ”に生かされているという謙虚な姿勢を持つ。もちろんいざという時には誇り高き苛烈な戦士となって戦いに挑むが,基本的には博愛と共生の精神に満ちた平和的な民族だ。

 

一方の人類は(よく知られるように)自分たちこそ支配者であり,私利私欲を満たすために破壊と殺戮を繰り返す粗野で暴力的な存在だ。

 

その両者の争いにパンドラの異教徒的な存在である部族が加わり,しかもその部族が人類と手を組むというのが本作の戦いの構図である。

 

あらゆる生物の相互理解と共生,家族の愛と絆というシリーズ1作目からの重要なテーマはもちろん本作でも物語の肝だ。それは,分断が煽られ,ヘイトがまかり通り,外国人を排除せよという声がますます大きくなる現実世界に対する痛烈なカウンター・パンチにほかならない。人類の一員として,観ていて何度も惨めな(というか,恥ずかしい)気持ちになってしまった。人間をやめてナヴィになりたい(パンドラへの移住でも可)。

 

 

 

 

 

宮島未奈の青春エンタメ『成瀬は都を駆け抜ける』(新潮社,2025年)を読了。3作目にして「成瀬」完結である。



○内容(Amazonの商品紹介より)

膳所高校を卒業し、晴れて京大生となった成瀬あかり。一世一代の恋に破れた同級生、「達磨研究会」なる謎のサークル、簿記YouTuber、娘とともに地元テレビの取材を受ける母、憧れの人に一途に恋焦がれる男子大学生……。千年の都を舞台に、ますます個性豊かな面々が成瀬あかり史に名を刻む中、幼馴染の島崎のもとには成瀬から突然速達が届いて……⁉ 全6篇、最高の主人公に訪れる大団円を見届けよ!


全6篇のエピソードが収録されている。どれも安定の「成瀬」だった。超個性的で唯一無二の「成瀬あかり」がこれで見納めとは寂しいかぎり。

3作品を改めて振り返ると,このシリーズは成瀬あかりを知る者の証言により紡ぎ出された偉人伝,唯一無二の存在である成瀬あかりの伝記なのだなあと実感する。そう感じる要因は,本シリーズは「成瀬あかり」という強烈な個性の持ち主が主人公でありながら、その主人公の視点で話が進まないという作りにあると思う。

成瀬の家族や友人の視点で成瀬の言動を描写するから,「言葉数が少なくて無表情,何を考えているか分からない」という成瀬の個性がそのままストーレトに読み手に伝わる。その独特の思考と言動を目の当たりにするたびに,われわれ読者も成瀬の友人たちと同じように驚き,感心し,そして成瀬が大好きになるのだ。

成瀬あかりの「あかり」という名前には,「まわりの人たちを明るく照らす存在になるように」という両親の願いが込められている(と成瀬本人が語っている)。成瀬あかりに惹きつけられた島崎や坪井と同じく,私たち読者もまた成瀬の温かくポジティブな「あかり」に照らされているのだろう。


くまざわ書店で買ったら,限定のクリスマス・デザインのカバーをもらえた。赤と緑の2種類から緑をチョイス。