当ブログで主張して来た論旨とほぼ同じ主張が、英国紙に掲載されたので、備忘録として訳した上で貼っておく。
The US isn’t the biggest power in the Middle East any more. Iran is
米国はもはや中東最大のパワーではない、それはイランだ
サイモン・ティスダル
2024年1月13日土曜日GMT 12.32
以下翻訳 by Kotaroe
中国とロシアを同盟国とする独裁政権は、米国の影響力が低下する中、中東連合を結成している。
イエメンでイランの支援を受けたフーシ派武装勢力に対する米国主導の数多くの空爆の最初のものは、中東における西側の政策の失敗の長い軌跡のもう一つの残念な節目となる。その中で最も重要かつ重大な出来事は、数十年前から続いているイスラエル・パレスチナ紛争解決の失敗である。
英国の支援を受けた米国が、貿易を圧迫するフーシ派による紅海海運への攻撃に対抗して武力行使を余儀なくされたという事実は、米国の政治的影響力が低下し、外交が無力で、権威が見下されているという好ましくない現実を反映している。フーシ派はひるむことなく、攻撃を続けると誓った。
この複雑な際限のないエスカレーションは、もう一つの好ましくない事実を浮き彫りにしている。中東の覇権国は、もはや米国でも、西側同盟を結んだエジプトでも、サウジアラビアでも、イスラエルでもない。それはフーシ派の主要な同盟国であるイランだ。
フーシ派が作戦の引き金になったと言っているひどいガザの虐殺の中で、勝者と敗者の話をするのは簡単だ。しかし、戦略的に言えば、この危機の中で誰が先行しているかは明らかだ。代理戦闘でイランの立場はパレスチナ人の犠牲者、ヒズボラのミサイル、イラクとシリアの爆撃、フーシ派の無人機によって強化されている。
ジョー・バイデン米大統領は、ハマスの残虐行為の後、イスラエルへの無条件支援を軽率に約束し、国連の停戦計画に拒否権を行使することで、世界の (そして多くの米国の) 世論を遠ざけた。彼の中東政策は時代遅れで非現実的に見える。アラブ世界では決して人気があるわけではない米国は、必要悪として容認されていた。もう、そうではない。非アラブ系イランが主導権を握っている。
イスラエルも10月7日以来、戦略的な警鐘を鳴らされているが、過激な政治家たちはまだそれを理解していない。ガザの恐怖は、ハーグで提起された前例のないジェノサイド疑惑を目の当たりにして、ガザに対する見方を永久に悪い方に変えてしまった。サウジアラビアのロンドン駐在大使であるハリド・ビン・バンダル氏は先週、BBCに対し、ユダヤ人国家をもはや特別なケースとして扱ってはならない、と語った。
制裁回避のため中国と共謀し、イランは毎月数百万バレルの割引原油を中国に販売
イランの強権的な独裁政権にとって、これは儲けものだ。イスラム尊師には三つの主要な外交政策の目標がある。1979年革命における悪魔のような敵である米国を中東から追い出すこと。地域の優位性を維持する;中国、ロシアとの主要な同盟関係を強化する。イスラエルの破壊は、現実であれ修辞的であれ、4番目だ。
「抵抗の枢軸」 であるイランの民兵ネットワークは、距離を置いて活動している。例えば、テヘランによって訓練され、武装したフーシ派がその命令に従うかどうかについては、意見が分かれている。一部のアナリストは、イランがイエメンの代理人をコントロールできていないと考えている。レバノンのヒズボラも、作戦上は自律的だと主張している。
しかし、ガザのハマス、パレスチナ西岸地区の派閥、イラクとシリアを拠点とする民兵と一緒に考えると、明らかにイランは米国を凌駕する意思を持った遠隔操作の連合を結成したのだ。イエメンの長期にわたる内戦の停戦を求めるのではなく、フーシ派の基地を爆撃しても、この現実は変わらない。それは、テヘランの反西側、反イスラエルの地域全体の抵抗物語を加速させる可能性が高い。
イランは昨年、湾岸アラブ諸国との関係を修復するために現実的な措置をとり、サウジアラビアとの外交関係を回復した。しかし、リヤドとテヘランの間で愛が失われることはない。この取引の最も重要な点は、中国が仲介したことだ。
中国とロシアはイランの新たな親友だ。そして、他の要因よりも、これがイランの運命を変え、イランを無視できない大国にした。ウクライナ侵攻と、それ以前の中露 「制限なし」 協力協定が、この移行のきっかけとなった。
この戦争とその影響は、ポスト・ドナルド・トランプである米国のグローバル・リーダーシップが後退しており、米国が監督するルールに基づく国際秩序は転覆と交代の機が熟しているという、北京とモスクワですでに芽生えていた信念を明確にした。
10年以上前に習近平が政権を握って以来、中国は米国に対抗し、可能であれば米国に取って代わる地政学的・経済的影響力の領域を築いてきた。イランは習主席の計画の中心だ。2021年、両国は25年間の戦略的投資とエネルギー協定に署名した。中国の支援の下、イランはBRICSグループと上海協力機構に参加している。
制裁を回避するために中国政府と共謀し、イランは毎月数百万バレルの割引原油を中国に販売し、 「闇の艦隊」の 石油タンカーで中国に輸送している。長年の停滞と激しい国内の政治的・社会的不安の後、経済は持ち直している。習氏は2月、イランのエブラヒム・ライシ大統領に対し、中国は米国の 「一国主義といじめ」 との戦いを支持すると語った。
ロシアの場合は銃がすべてだ。イランは、モスクワがウクライナ人殺害に使用する武装ドローンを供給している。伝えられるところでは、米国情報機関は、ロシアのワーグナー傭兵集団がヒズボラに中距離防空システムを提供する計画を建てている、と信じているが、これが事実であれば衝撃的な挑発だ。
一方、イランは、 「前例のない防衛パートナーシップ」 の成果である、ロシアの先進的なスホーイSU-35戦闘爆撃機と攻撃ヘリコプターの入手を近く行う可能性がある。ロシアからイランへの輸出が急増している。ロシア政府は天然ガス田の開発に400億ドルを投じる、と表明している。
さらに、イランの非合法化された核兵器関連濃縮計画が急速に進んでいると伝えられているが、これもまたオウンゴールであり、2015年の国連支援による拡散防止協定をトランプ大統領が破棄したことに起因する。 バイデンは復活を望んでいたが断念した。 ロシアと中国はもはや味方ではない。 イスラエルにとって最悪の悪夢であるイランの爆弾攻撃がこれまで以上に近づいているかもしれない。
「今日、イスラム共和国のムードは勝利に満ちている」とアナリストのロイエル・マルク・ゲレヒトとレイ・テイケイは書いた。 「(イランは)制裁や国内抗議活動を乗り越えた。 大国の同盟国の援助により、経済を安定させ、防衛力を補強し始めた。 核爆弾は、手の届くところにある。」
45年間の努力を経て、イランはついに大国となった。 イランに対する制裁、排斥、脅迫は効果がなかった。 米国、英国、そしてイスラエルは、強力な民兵組織と経済力に支えられた世界三角同盟の一員である手強い敵に直面している。 より広範な紛争を回避するには、新たな外交的アプローチが緊急に必要である。
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イラン製新式ドローン
何度か述べてきたが、イランの保有するミサイルとドローンの数量は、余裕の飽和攻撃で中東の全米軍基地を完全破壊することが可能だ。 同時に、中東に展開する米艦隊も、海底艦隊に変貌させることが可能だ。だって地域、海域の米軍の対空ミサイルの数よりもずっと多いのだもの。 アホでもわかる。 ちなみに、米国が把握、あるいは推測しているイランのミサイル、ドローンの数量は発表されているから、それをもとに私は計算している。
加えて、レバノンのヒズボラ、イラクのバルド組織、イエメンのフーシ派の保有数量を考慮すれば、中東での戦争で米軍に勝ち目はない。
そんなことは、イランも親イラン武装組織も中東各国もわかっている。 むろんロシアと中国も。 イスラエルもわかっているから、自国とイランの戦争を開始する気はないでしょ。 代わりに米国にやってほしがっていると思うが。
米国防省と米軍も同様の認識を持っているはずだ。 そうでなければ、空母アイゼンハワーがイラン海軍に恫喝されて進路変更などしない。 わからないのが、ホワイトハウスと米議会の認識度合い。 どこまで、狂信的なバカに支配されているのか、よくわからない昨今だ。
もし、米国が核弾頭搭載の大陸間弾道ミサイルをありったけイランに発射すれば、イランを壊滅させられるが、ロシアと中国からの同様の攻撃に対して報復攻撃が不可能になり、核抑止力を失う羽目になる。
イラン、ロシア、中国の同盟が成立した今、結局、同サイコロを振っても、米国に勝ち目はない、というのが個人的な考えだ。 英国の存在など、おまけにもならない。
こうなってしまった遠因は、たぶん15年ぐらい前からの誤った米国の政策にある。 内政、外交ともだ。 それは、いつか別な記事で整理するつもりだ。
バイデン政権はバカなりに考えて、「イランやヒズボラはおっかないから無理でも、ここなら叩ける」と踏んで、世界最貧国の一つイエメンのフーシ派への攻撃を開始したのだと思う。 でも、それすらも、たぶん間違いだったと思う。
「敵を知り、己を知れば百選危うからず」と言うが、バイデン政権は敵の分析も、己の力の認識も間違え続けている。
そして・・・我が国の、あの歴史的バカは、絶対に全く、これっぽっちもこうした世界の多極化のうねりを理解していない。 非常にまずい。
沈没首相コンビ