台湾、3期目を迎える民進党政権が抱える苦悩 若い世代の忌避感が生んだ「ねじれ議会」 

劉 彦甫 : 東洋経済 

2024/01/14 0:00

 

抜粋

 

1月13日に投票日を迎えた台湾総統選は即日開票され、民進党の頼清徳候補が当選した。アメリカと密接に協力し、中国の圧力に対峙してきた蔡英文政権の路線が引き継がれる。同一政党が3期連続で政権を担うのは台湾が民主化して以来、初めてとなる。

 

一方、同時に行われた立法委員(国会議員)選で民進党は苦戦を強いられた。同党は単独過半数がとれず少数与党に転落議会第1党の座も最大野党の国民党にゆずった。ただ二大政党とも立法院(国会)では過半数がとれず、第3政党の台湾民衆党がキャスティングボートを握ることになる。

 

台湾の今後4年間はこれまでの8年間と路線は変わらない。しかし、政局の混乱による政策の停滞が見込まれる。中国が台湾独立勢力と見なす民進党政権が3期続く初めての状況でもあり、台湾の政治状況によってはアジア太平洋地域の安全保障環境が不安定化する恐れもある。

 

頼氏の得票率は4割をかろうじて超えるにとどまり、議会では単独過半数を失った。今後は少数与党として厳しい政権運営を迫られるのが予想される。民進党政権にすべてを任せるわけにはいかないと台湾の有権者は考えた。

 

若い世代で広がる2大政党への忌避感
思わぬ健闘を果たしたのは第3政党の台湾民衆党を率いる柯文哲候補だ。現代台湾政治が専門の平井新・東海大学特任講師は「柯文哲氏の得票率が予想していたよりも高かった」と指摘する。2023年12月には支持率が一時10%台に低下し、失速したものの最終盤で巻き返した。

 

 

若い世代では不動産価格の高騰や物価高に対応しきれていない低賃金など経済問題であえぐ声が大きい。民進党と国民党の2大政党はこれらの問題に対応することができず、中国との関係などイデオロギー争いに終始しているとの不満がある。

 

国政でねじれ発生により、政策は停滞か
中国の圧力が続くと見られる中で、民進党の新政権は議会とのねじれ関係で苦しむことになりそうだ。過去8年間は民進党が立法院でも単独過半数をもっていた。選挙での当選確実が明らかになった後、蔡英文総統は立法院で過半数割れしたことを念頭に「より多くの声に耳を傾けなければならない」と話した。

民進党は過去にも国政のねじれで苦しんだ経験がある。2000~2008年、民進党の陳水扁政権期には、議会で国民党など野党陣営が多数派だったために、予算案や重要法案が立法院で通過しなかった事例もあった。蔡政権が進めてきた対中抑止のための国防強化政策などで支障が出てくる可能性がある。

民進党は政権が継続できた理由である外交・国防政策を盤石にするためにも、国内の広い声をすくい上げる努力をする必要がある。頼清徳氏は勝利演説で「民進党に投票しなかった人たちの声も聞いた」と語った。

新たな議会をうまく運営できるのか。それができなければ、支持された外交・国防政策でも信頼を失いかねない重責が新政権にのしかかっている。

 

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結果を見て、「まあ、こんなものだろう」という感想。 多くの台湾の知人友人も、こんな予想をしていた。

 

妙なイデオロギーに染まらず、損得勘定を冷静にするならば、できる限り「現状維持」を続けるのが望ましい、というわけだ。 つまり、建前上一つの中国にあって、自治権を確保し、経済的自由を維持する。

 

米国の、特に民主党政権の対中強硬扇動には乗らないことが望ましい。 中国の面子をつぶす言動はできるだけ控え、「なんだかんだ言っても、同胞でしょう。」とゴマをすって経済的制裁を受けないようにする。

 

米国がよほどのバカをしない限り、当面は中国の台湾進攻はないと、個人的には想定している。 表には出さないようにしているが、中国はバブルの後遺症に間違いなく苦しんでいる。トラブルのネタを抱え込むことを敢えて計画しているとも思えない。

 

ただし、面子の問題があり、過剰な刺激を控えることが肝要だ。

 

有事の際は米軍はあてにならない。 ウクライナ、イスラエル、そして今イエメン、これ以上軍事行動をする余裕など米国にはない。 金もないし、弾薬の在庫もない。

第七艦隊は、中国の対艦ミサイルの飽和攻撃を受ければ、海の藻屑と消える。 

 

中国は、台湾の海上閉鎖を行う力がある。 下記は2022年、8月の中国軍の演習時の行動領域だ。

 

 

とにかく実を取ることが重要だ。そう考える器量を、新総裁が持っているかどうかは知らない。