米大統領が富裕層キャピタルゲイン増税提案へ、2倍に-関係者
Laura Davison、Allyson Versprille
更新日時 2021年4月23日 5:48 JST

  • 提案では所得100万ドル以上の個人に対する税率を39.6%に引き上げ
  • オバマケアへの資金充当を目的とした課税と合わせると43.4%に


バイデン米大統領は富裕層に対するキャピタルゲイン税の税率を39.6%と、現行のほぼ2倍に引き上げることを提案する見通しだ。長年の格差解消を目指した一連の社会的支出の財源にするのが目的。提案内容に詳しい複数の関係者が明らかにした。

  
提案が公になっていないとして匿名を条件に語った関係者らによれば、所得が100万ドル(約1億800万円)以上の個人に対するキャピタルゲイン税率を現行の20%から39.6%に引き上げる内容。投資収入に対して現在課している付加税を合わせると、キャピタルゲインに対する連邦税の税率は最高で43.4%に達する可能性がある。

  医療保険制度改革(オバマケア)の資金への充当を目的とした投資収入への課税3.8%は据え置かれ、金融資産のリターンへの課税税率が賃金・給与所得に対する課税の最高税率を上回ることになるという。

  この報道を受け、米株式相場は急落。米国債市場では10年債利回りが上昇幅を縮小した。

  ホワイトハウスのサキ報道官はこの日の記者会見でキャピタルゲイン税の計画について聞かれ、「どのようなものになるか、まだ最終調整中だ」と述べた。バイデン大統領は同提案について、28日に上下両院合同会議で行う就任後初の演説で増税策の一部として発表する見通し。

  
一方で共和党は、トランプ前大統領が実施した2017年の減税を維持することを強く主張。現行のキャピタルゲイン税の枠組みは貯蓄を促し、将来の経済成長を促進すると主張してきた。

  上院財政委員会の共和党トップ、グラスリー上院議員はバイデン氏のキャピタルゲイン増税計画について、「投資が減り、失業を招くことになる」と批判。17年の減税の成果を称賛し、「もしそれが壊れていないなら、直さなくていい」と語った。





バイデン政権、株安容認か 増税案は暗号資産も直撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2319X0T20C21A4000000/

抜粋

日本時間23日の午前2時すぎ、突然、ダウ平均が急落した。バイデン政権が株式などの売却益にかかるキャピタルゲイン(投資収益)の課税強化に動く、との報道に市場が反応したのだ。既に大統領選挙のときから富裕層の投資収益課税を20%から39%以上に引き上げる案を明示していたので、マーケットも覚悟はしていた。とはいえ、いよいよ現実の問題となれば、警戒感は強まる。

特に市場が気にする点は、バイデン大統領が「エリート集団」のウォール街と一定の距離を保ち、中間層重視の姿勢を打ち出していることだ。
トランプ前大統領の如く株価上昇歓迎コメントでも出せば、民主党急進左派のエリザベス・ウォーレン上院議員が間髪入れず反論するであろう。僅差過半数の上院ではわずかに造反議員が出れば、バイデン大型財政政策は暗礁に乗り上げる。

ときあたかも、アルケゴス問題が富裕層マネーの暴走と手助けする投資銀行、デリバティブ金融商品の問題をあらわにした。


ただし、増税案は共和党が強く反対している。財政調整法による単独強行採決という切り札もあくまで特例措置であり、続けて使える手段ではない。実現まで数カ月は要するであろう。

まずは、年収100万ドル以上の高所得者による年度内の株式売却がスローモーションのごとく進行する展開が予想される。

さらに、本丸ともいえる法人税21%から28%への増税案も控える。その企業収益への影響を市場はいまだ織り込んでいない。新大統領との蜜月期間も終わると、いよいよ結婚生活の現実の厳しさをかみ締める時期となりそうだ。

影響は暗号資産(仮想通貨)にも及ぶ。ビットコイン価格は増税報道前の5万5000ドル台から5万ドルの大台を割り込む展開だ。コインベース上場時に6万4000ドル台の最高値をつけた後、規制強化などを嫌気して調整局面に入っているが、相変わらずボラティリティー(価格変動)が激しい。


今回の急落劇は、富裕層マネーが仮想通貨市場にも流入していることを映す現象といえよう。米ゴールドマン・サックスも富裕層向け資産運用部門の顧客に対し、ビットコインなど仮想通貨を投資対象に加える方向だ。モルガン・スタンレーもビットコインにのみ投資するファンドを立ち上げたとされる。200万ドル以上を預託して、「積極的なリスクを許容できる」富裕層限定という触れ込みである。

富裕層ビジネスの拡大は止まらない。
仮想通貨やファミリーオフィスの分野で、トランプ時代の規制緩和で骨抜きにされ後手に回った米証券取引委員会(SEC)の巻き返しが注目される。ちなみにSECの新委員長ゲンスラー氏は、民間時代に米マサチューセッツ工科大学(MIT)で仮想通貨とブロックチェーンについて教鞭(きょうべん)をとっていた人物である。

 

 

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民主党左派は、リスク資産市場への影響を気にかけていない。

 

一方では、共和党のみならず、民主党でもウォール街からの献金を受けている向きもいるから、すんなりと増税案が通るはずもない。

 

コンセプトはともかく、数字の調整は行われる可能性が高い。

 

どれほど時間がかかって成立するのかは、今は予断が持てない。

 

ウォーレン議員は、もしかすると、FRBのパウエルをも締め上げるチャンスをうかがっているかもしれない。