8月も終わりに近づいた早朝はほんのりと汗をかきそうな暖かさもありながら、ふわりとした、涼やかな空気にも包まれつつ、なんだかとても気持ちがよい。今年も暑い、暑い、と散々愚痴をたらしながら過ぎていった夏も、もうすぐ終わりなのだ、と思うと少し寂しくなる。海にも行かず、花火も見ず、盆踊りの音も聞かず、夏らしいことを何も味わずにあっという間に過ぎていった季節は終わりに近づきつつある今になって私の前にはっきりと現れてくるのだった。何の音を立てずに、ただうっすらと波打ち漂う水の面に何の前触れもなく、雫がひとひら、ぽつんと落ちる。
空には雲ひとつなく、遠くを望めば山の陰がうっすらと見えてくる。ゆとりのない時の流れにあがなうこともなく、ただその日をやり過ごすことも、またそれもよい、と受け入れて生きてきた。ただ、心を広く持って、丁寧に耳を澄ませなければ聞こえない時の声があることも知っている。さあ、今こそ大きく息を吸って、どこからか吹く天つ風がくるのを待たむか。