だいぶ前だが、浜崎洋介さんの影響から、福田恒存の評論集「日本を思ふ」を読んだ。といっても、多忙もあって、全ての論文に目を通すことはできず、のちの楽しみにしたいと思っている。
この方は、お顔もそうなのだが、思想も文体も硬質で、ああ、こういう文章を書く方だから、「明暗」のような戯曲を書いたのね、と思わず納得できる。
読んだ論文の中で「近代の宿命」は、西洋の神との葛藤から近代日本の課題へと突き進む難解な内容だったが、なんで今までこの評論に出会わなかったのか、と悔いるような妙な気分になった。あ、ここに本物がいたな、という感覚といえば伝わるだろうか。現在国難と言える日本の将来を考える上でもて刺さる内容といえる。
戯曲についてはまた書かなくてはいけないのだけど、タブーにどんどん切り込んでいく御仁である。
戦前から評論、翻訳、戯曲執筆だけでなく、戦後は劇団「雲」を立ち上げて、芥川比呂志、杉村春子など、当時の錚々たる役者陣に演出指導したことでも知られるが、そのタフさの一ミリでも頂きたい。50代に向けて自分もまだまだ突き進むぞ、と炎を燃やしている。
中村光夫もそうだが、戦前戦後を生きた文芸人との出会いはまた新たな学びの機会を与えられたと言っていい。また、彼らの教えを継承する浜崎洋介氏の著書も読む機会が欲しい。未だ「日本を思ふ」人がこの国に多くいることがありがたい。