昨年の6月頃、伊豆伊東市、富戸の鹿島踊りの文章を一通り書きまとめた後、土地と労働との関わり、そして、芸能の誕生というテーマが浮かんだ。伊豆といえば、相模湾と駿河湾という豊富な漁場を生かした漁業が頭に浮かぶが、こと、この富戸という地域では、石にまつわる労働があったことを私の祖母から、ちょうど鹿島踊りの取材で富戸に滞在していた時に聞かされた。それが、昨年の春だったか、その後、書こう書こうと思いながら一向に手が伸びずにいたが、怠け者の私も、そろそろ、この石にまつわる労働がどんなものであったか、話を残しておく必要があると思ったわけである。今の所、情報も少なく、途切れ途切れになるかもしれないが、陳腐なことと自分が思ったにせよ、今ある限りのことを書き綴っていくことが、こういう内容については、特に大切なことだと感じるのである。芸能の誕生というところまでたどり着くには、やはり、富戸伝統のボラ漁まで遡らなければいけないが、やはり、祖母の思いを大切にする意味でも、まずは、石ということに焦点を絞りたいと思う。