今朝、松下裕「チェーホフ戯曲選」の中から、現在取り組んでいる「イワーノフ」を読了。チェーホフは、「イワーノフ」をドラマ版とコメディで書いているが、松下氏が訳したのは、ドラマ版である。私たちの舞台では、ドラマ版は4幕だけで採用しているため、1~3幕については、初めて目にするもので、コメディ版とかぶるところももちろんあるのだが、コメディ版に比べると、人物のキャラクターや内面を象徴するようなセリフが多く書かれているため、役作りの参考になる。ところで役作りというと、どうしても役の人物が出てくるシーンやその役の人物そのものばかりに目がいきがちになるが、それだと役が平面的になり、限界も早い。最近、取り組んでいるのは、自分が研究する役の人物と他の人物の関係性を研究することである。たとえば、他の人物が研究する役の人物をどう見ているか。「イワーノフ」でいえば、シャベリスキーはドラマ版の2幕で、アンナの主治医であるリヴォーフのことを「心の狭い、融通の聞かない医者」と評しているが、イワーノフは「うんざりだけど好感が持てる」と言っている。このセリフの真意や背景をつきつめていくことで、リヴォーフという人間がもっと立体的になっていくし、ひいては他の役のことも今まで以上に見えてくる。