人間的課題を単純にみただけではわからない。
むしろ逆説的になることもある。
世界的に有名な劇作家、アントン・チェーホフと同じ世代に活躍した、ロシアの演出家、コンスタンチン・スタニスラフスキーというひとがいます。この人は、天才的な俳優を研究して、俳優における創作方法を研究した人です。現在、「スタニスラフスキーシステム」と言われ、ヨーロッパ、アメリカ、もちろん日本の演劇界に大きな影響をあたえ、現代演劇の源流といわれています。現在、私は、このシステムをベースとした俳優教育を行う劇団のスタジオに所属しています。
むしろ逆説的になることもある。
世界的に有名な劇作家、アントン・チェーホフと同じ世代に活躍した、ロシアの演出家、コンスタンチン・スタニスラフスキーというひとがいます。この人は、天才的な俳優を研究して、俳優における創作方法を研究した人です。現在、「スタニスラフスキーシステム」と言われ、ヨーロッパ、アメリカ、もちろん日本の演劇界に大きな影響をあたえ、現代演劇の源流といわれています。現在、私は、このシステムをベースとした俳優教育を行う劇団のスタジオに所属しています。
俳優の創作活動において一番大切なことは何か?スタニスラフスキーはいろいろな視点から、そのカギについて説明していますが、私は役者である以上、「シーン、作品における役の人物の行動課題」、つまり何のために行動するかが大切であると考えています。そして、スタニスラフスキーは、この課題が、役を演じる人間の真実、「人間的課題」でなければならないと言っています。私は、この人間的課題を導くための方法を具体的に知りたいと考えて、スタニスラフスキーが書いた「俳優の仕事(俳優修業)」を昨年からよみ始めました。
その中で「適応」という対象への作用の手段について、書いています。
スタニスラフスキーは、適応の目的について次のようにいってます。
・内面の感情や全体的な状況をできるだけはっきりと示そうとする
興味深いのはもう一つの目的です。
・自分の感情や状況を隠し、カムフラージュする
日常生活では、感情や状況を隠そうとすることが無意識に行われています。たとえば素晴らしい芝居を見たときに、人間は席を立ち、賞賛するが、一方で、圧倒されて打ちのめされた気分があったり、俳優であれば、自分にはとてもこんな芝居はできないという絶望感にかられるかもしれないということ。賞賛するという行動によって、それらの気分は隠される。いや隠されたに見えるだけではないか。身体器官もしくは細胞のレベルでは、隠された気分が何らかの作用をしているのではないか。要は、人間は、これら無意識的な、有機的な自然がある、という仮説です。
俳優は、舞台上でしばしば意識的な適応を行おうとします。対象を笑わせるために変な顔をしようとか、説得するために厳しい顔をしようとするということです。しかし、変な顔とはなんだろう?そして厳しい顔とは?やがて適応だけが目的になり、酷い時にはそれを観客にみせようとする余興になるのです。そして、自分の真実ということからはまったく離れてしまう。 適応は、なるべく無意識的で、人間の有機的な自然が生み出されるべきだと、スタニスラフスキーは言っています。だから俳優は、意識だけでなく、有機的な自然に従った、本当の人間でなくてはならないと。であれば、人間的課題も、意識レベルでは計り知れない、隠された気分から発掘されるのではないか。
隠された気分は何か?シーンごと、または作品全体と、似たような自分の体験を引き出し、細かく思い出して、考えていく作業が、スタニスラフスキーシステムにのっとって、創作活動を行う俳優の大切な仕事です。
スタニスラフスキーは、適応の目的について次のようにいってます。
・内面の感情や全体的な状況をできるだけはっきりと示そうとする
興味深いのはもう一つの目的です。
・自分の感情や状況を隠し、カムフラージュする
日常生活では、感情や状況を隠そうとすることが無意識に行われています。たとえば素晴らしい芝居を見たときに、人間は席を立ち、賞賛するが、一方で、圧倒されて打ちのめされた気分があったり、俳優であれば、自分にはとてもこんな芝居はできないという絶望感にかられるかもしれないということ。賞賛するという行動によって、それらの気分は隠される。いや隠されたに見えるだけではないか。身体器官もしくは細胞のレベルでは、隠された気分が何らかの作用をしているのではないか。要は、人間は、これら無意識的な、有機的な自然がある、という仮説です。
俳優は、舞台上でしばしば意識的な適応を行おうとします。対象を笑わせるために変な顔をしようとか、説得するために厳しい顔をしようとするということです。しかし、変な顔とはなんだろう?そして厳しい顔とは?やがて適応だけが目的になり、酷い時にはそれを観客にみせようとする余興になるのです。そして、自分の真実ということからはまったく離れてしまう。 適応は、なるべく無意識的で、人間の有機的な自然が生み出されるべきだと、スタニスラフスキーは言っています。だから俳優は、意識だけでなく、有機的な自然に従った、本当の人間でなくてはならないと。であれば、人間的課題も、意識レベルでは計り知れない、隠された気分から発掘されるのではないか。
隠された気分は何か?シーンごと、または作品全体と、似たような自分の体験を引き出し、細かく思い出して、考えていく作業が、スタニスラフスキーシステムにのっとって、創作活動を行う俳優の大切な仕事です。