昨日、芹沢文学読書会の会員の方々と、初めてお酒を飲む機会を持った。文学や音楽の話、その他、世情の話も含め、二時間強、ずいぶんと盛り上がった宴だった。宴中、私は、美術品や文学作品を収集されているご老人と、話しをする時間が長かった。御年は、80歳は超えておられると思われ、お耳も不自由のようだったが、ずいぶん熱心に私の話を聞いてくださった。「橋口五葉」という版画家の名前は、この方から教えていただいた。大正時代に活躍した人で、「大正の歌麿」と呼ばれるほどの腕だったという。ご老人が橋口五葉を知ったのは、現在も、江戸東京博物館で開催されている漱石展で、「我輩は猫である」の装丁を手がけたと紹介されていた。その後、どういう経緯かはわからないが、町田市立国際版画美術館で五葉の作品が展示されていることを知り、先日、その美術館までお出かけになられたようだ。ご年齢を感じさせない行動力である。知的好奇心は人をここまで生き生きとさせるのだろうか。物事を知ることに、年齢は関係ないことを改めて実感した。美術館で購入された、五葉の「紙梳ける女」が表紙に描かれた、一筆メモ帳を頂く。恥ずかしながら「髪梳ける女」に一瞬にして魅了されてしまった。梳いている髪の付け根の広がりがなんともいえず、美しい。町田の展示会は、今週末まで。私が、付け焼刃の知識ながら、なんとか老人の話についていったことに興を抱かれたのか、「今度会った時に本をあげる」とまでいってくださった。このようなご老人とお話をする機会を持てることは本当にありがたいことだ。まだまだ自分は青二才だと、未熟さを実感するとともに、年輪を重ねながら、知性を高め、なおその生長に意気盛んである生き方に、感銘を覚える。「食べるくらいなら焼酎を飲む」と言い放つ剛毅な姿にも現れている気がして、私もつられて思わず酒が進んだものだった。お体に気をつけて、まだまだ長生きしていただき、色々なことを我々青二才どもに教えていただきたい。