通勤中に、芹沢光治良の「若葉」という短編小説を読みました。今週末の読書会での題材です。昭和14年6月号の「新女苑」という女性向けと思われる雑誌に掲載された作品で、戦争で失明した叔父のことを案じる女学生の心情がつづられています。一回通読してみて、体が不自由な叔父を邪険にする他の家族の冷たいしぐさや言葉が、女学生の心情をさらに美しく際立たせているように感じました。30分強の通勤時間で読めるぐらいの分量ですから、主人公である女学生の立場だけでなく、失明した叔父の立場、その叔父に邪険な家族の立場にたって、様々な角度で何度か読み返してみたいと思います。長編をじっくり読むのもいいですが、短編小説を何度も読み返してみる事が、読書人としての成長、そして偏りのない見方を形成することにつながる気がします。通勤時間で読みきれる分量の小説、他にもあるのでしょうか。芹沢光治良を知らない人が多いと思いますが、昭和を中心に活躍した作家です。若い頃からは、家族の天理教への信心、フランス在住時の肺結核など、苦労の絶えなかった人のようですが、34歳から、亡くなられる(97歳)直前まで創作活動を続けてらっしゃいます。たまたま、私の自宅の近くで読書会が催されていて、先月参加したご縁から、先生の著書を読み進めることとなりました。著書の中に「人間の運命」という本があります。読了するのに一年近くかかりそうな大変な長編ですが、読書会の参加者の方にお借りして、先生の創作への執念をかみしめながら、読んでいるところです。きりのいいところで、ぜひご紹介したいところです。では。