自分が書きたいと頭で思っていることを全て書ききることは非常に困難である。語彙不足はもちろんあるが、何か見えない抵抗が全てを表現しきろうとするのを邪魔しているように思える。何かいつも奥歯のなかにモノが挟まっているような、気味の悪い感覚なのである。最近、小林秀雄や坂口安吾の作品を読み直している。彼らの知識量、広い視野にも感服するが、彼らの文章を読んでいると、自分の思っていることを全て書ききっているかのような印象を受ける。自分の思いをできるだけ文字という、目に見える形にする、整理して見直す、別の思いを文字にする、そしてまた見直す。このような地道な作業を日々続けることで、自分の魂を吐き出されたかのような作品が生み出されるのかもしれない。しかし、一方で、時代の違いも感じずにはいられない。彼らの時代は、時代の閉塞感からか、語らざるにはいられない人がたくさんいたのではないか。現代の日本は、表向きは豊かさと自由に満ち溢れている。ネットの普及により、語ること、表現する人は多くなったように思える。でも、本当に語れている人、表現できる人ってどれだけいるんだろうか。 表向きだけの文章は書きたくないと常々思うが、まだ自分も不自由だなと思う。ともかく、下手な文章もたまってきたし、そろそろ整理でもしますか。