《苦しみの日々 哀しみの日々


苦しみの日々

哀しみの日々

それはひとを少しは深くするだろう

わずか五ミリぐらいではあろうけれど


さなかには心臓も凍結

息をするのさえ難しいほどだが

なんとか通り抜けたとき 初めて気付く

あれはみずからを養うに足る時間であったと


少しずつ 少しずつ深くなってゆけば

やがては解るようになるだろう

人の痛みも 柘榴(ざくろ)のような傷口も

わかったとてどうなるものでもないけれど

     (わからないよりはいいだろう)


苦しみに負けて

哀しみにひしがれて

とげとげのサボテンと化してしまうのは

ごめんである


受け止めるしかない

折々の小さな刺(とげ)や 病でさえも

はしゃぎや 浮かれのなかには

自己省察の要素は皆無なのだから


                             ~茨木のり子~


うたとともに