読書メモ『ウクライナ政府報告書』 | 国会周辺生活 日記
ウクライナ政府(緊急事態省)報告書
『チェルノブイリ事故から25年 ”Safety for the Future”』

(2011年4月20日‐22日、チェルノブイリ25周年国際科学会議資料)
「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク翻訳資料
http://archives.shiminkagaku.org/archives/csijnewsletter_010_ukuraine_01.pdf
原文
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/chornobyl25eng.pdf












1997‐2001年には、チェルノブイリ原発30 kmゾーンから避難した子どもと汚染地域にすむ子どもの両方で、健康な子どもの減少というはっきりした傾向が観察された。2001年における子どもの健康度による分布は以下のとおりである:30 kmゾーンから避難した子どもでⅠグループ(訳者注:健康)の子どもは一人もいなかった。Ⅱグループ(慢性疾患へのリスクグループ)は23.4%、Ⅲグループ(慢性疾患がある)は63.9%、Ⅳグループ(重篤な疾患がある)は12.7%であった。汚染地域の子どもたちの中では、Ⅰグループ(健康)の子どもは6.3%、Ⅱグループ(慢性疾患へのリスクグループ)は26.1%、Ⅲグループ(慢性疾患がある)は57.5%、Ⅳグループ(重篤な疾患がある)は10.1%と判定された。(p8)



17‐18歳の時、チェルノブイリ30 kmゾーンからの避難者の76.6%、汚染地住民の66.7%に慢性的な身体疾患が現れ、病理学的な変化の指数は5.7に達した。(p8)



・プリピャチ市とチェルノブイリ原発30 kmゾーンから子ども時代に避難した人を親として生まれた子どもたち(Ⅰグループ)、および放射能汚染第2ゾーン、第3ゾーンの住民で子ども時代に事故に遭った人びとから生まれて汚染地域に住んでいた、あるいは現在も汚染地域に住んでいる子ども(Ⅱグループ)の健康に関する評価によれば、実際、彼らの中に健康な子どもの数は10%を超えず、病理学的変化の指数は5.39に達した。
 健康状態の主な基準である身体的発達は、62.40‐62.58%の子どもで不調和であった。・・・ほとんど四分の一の(24.6%)子ども‐汚染地域住民が、身体的発達の不調和とともに、パスポート年齢に比べて生物学的年齢の遅れがあった。(p9)



・母親の甲状腺被曝線量、母親と/あるいは父親の全身被曝線量と、彼らの子どもの免疫不足状態の進展は、相関の可能性がある。(p9)



・被曝した親から生まれた子ども(基本登録の第4グループ)には、病気の発症率と有病率が有意に高い。(図3.35)(p14)



・図3.35 ウクライナの子どもと、被曝した親から生まれた子どもの病気の発症率(1)と有病率(2)の傾向(“ウクライナ医学アカデミー放射線研究センター”のデータ)(p14)





・基本登録第4グループの子どもたちのこれらのパラメーターの進展は、ウクライナ全住民よりも早い。この見積もりによれば、近い将来、負の傾向が蓄えられていくであろう。(p14)




★図3.36 被曝した親から生まれ慢性疾患のある子どもと健康な子どもの比重の事故後の期間における変動(“ウクライナ医学アカデミー放射線医学研究センター”のデータ)(p15)





被曝した人の子どもは1992年と比べ2009年には特定の分類の病気の登録が急速に増加していることが注目される。すなわち、内分泌疾患‐11.61倍、筋骨系疾患‐5.34倍、消化器系‐5.00倍、精神および行動の異常‐3.83倍、循環器系疾患‐3.75倍、泌尿器系‐3.60倍である。・・・
 彼らの中には、すでに生後最初の1年でしばしば発病するという多くのグループが形成され、6‐7歳では49.2%から58.7%に達し、免疫状態は、多くの免疫学的パラメーターの頻度が生理学的な変動の幅を超えていること(75.0‐45.7%)が特徴的になっており、これが慢性疾患形成の基礎となっている。(図3.36)(p15)



事故後の期間の変動では、(被曝した人の子どもの中で)健康な子どもの比重は1992年の24.1%から2008年には5.8%に減少し、慢性疾患のある子どもの数は1992年の21.1%から2008年の78.2%に増加した。(p15)



・ウクライナ国家登録では、1986‐1987年のチェルノブイリ事故処理作業者から13,136人の子どもが生まれており、それらの中で1,190人(1,000人当たり90.6)が先天性欠損(IBD)として登録された。(p15)




・放射線の影響を受けている小児期年齢集団の健康状態の動的な変化は、以下のような、持続する負の傾向という特徴を示している。


 子どもたちは、さまざまな病気の発症率が増加しているだけでなく、実際に健康な子どもが量的に減少しており、その傾向は変わっていない。健康状態が最低レベルの子どもは、事故時に甲状腺に高線量の被曝をした子どもたちである。


 慢性的な病気の発症とその経過に次のような特異性がある。すなわち、発症の若年齢化、病変が多系統・多器官にわたる、治療法に対して比較的抵抗性があり再発の経過をとる、といったことである。


 事故時に胎児発達期であった子どもたちの場合、胎児期の被曝線量と、出生後の健康状態、身体発達、多数の小さな異常を有する表現型の形成、体細胞の染色体異常の数の増加との間に、信頼性のある相関が存在する。


 被曝した親から生まれた子どもでは、多因子型疾患の疾病素質、発達上の多数の小さな異常を有する形態発生上の変動の形成、体細胞の染色体異常の頻度上昇、マイクロサテライト関連のDNA部分の突然変異頻度の上昇などによって特徴づけられる、ゲノム不安定性の減少が形成されている。(p17)



・チェルノブイリで被災した大人の中でもっとも一般的(40‐52%)な病気は甲状腺(TG)の病気であり、一方普通の人口集団では、ウクライナ保健省の公式統計にしたがえば、その頻度はずっと少ない。(p18)



・チェルノブイリ惨事のときに18歳未満だった人びとの中で被曝線量の高い人ほど甲状腺ガンの有病率が高いことが、ウクライナとアメリカの研究者の甲状腺プロジェクトによるスクリーニングと研究で観察されている。さらに、事故前に生まれた子どもたちの罹病率は事故後に生まれた子どもでの率と比べると15倍かそれ以上であり、このことが《事故後に子どもの》甲状腺ガンの発生が放射線によるものであることを一層確認している。・・・甲状腺ガンの発生率は1990年から2008年まで徐々に増加している。(p22)



・(甲状腺ガンに関して)特に注意すべきは、離れた部位への転移の発生がある患者のパーセントが1990‐1995年には23.0%であったのが、2006年‐2009年には1.8%に減少したことである(p<0.001)。(p24)







★ウクライナ国内におけるセシウム137の汚染状況マップ(1986年5月10日)(p25)








・★ウクライナ国内におけるセシウム137の汚染状況マップ(2011年5月10日)(p26)








・★ウクライナ国内におけるセシウム137の汚染状況予測マップ(2036年5月10日)(p27)