こたか。「白倉由美さんの『セーラー服物語』って短編集の第一巻の巻末のあとがきみたいな部分に、ある文章があってさ。実はそれが30年以上自分を突き動かし続けているものだったりするんだよね」


黒「はあ、それはすごいと言うか何と言うか…。一体どんな文章なんです?」


こたか。「それはこんな文章だよ」

 

「夢」を実現させるたったひとつの方法は

ひとつだけの方法は

心からねがうこと

強くつよく

なにもかも捨てられるくらいつよく

祈ること

 

こたか。「以上だよ。まあ実に短い文章だけどね。この文章を長いこと、自室の机の前に貼ったりしていたなあ」


黒「はあ…願ったり祈ったりするだけですか?随分と他力本願な文章ですわね…」


こたか。「いやいや、全然違うよ。願いってのは、代償を伴うものだ。何も差し出さずに叶う願いなんてありえない。だから、願う以上は自分がそのために何を代償とするのか、どんな努力をするべきなのかを考えることになる。そもそも論としてさ、何もかも捨てられる程の強い想いを持っていて、何の努力もしないで、願いが叶うのを漫然と待ちながら過ごすなんてことが出来ると思う?」


黒「…無理でしょうね。願いを実現するための何らかの努力をしないことには居ても立っても居られないでしょうね」


こたか。「だよね。そして祈るってのは、それについて考え続けるって事だ。ただ努力を積み重ねるだけじゃなく、それが意義のある努力か、間違った方向に向かってないかを絶えず考え続ける。常に思考を放棄せずに執着し続けろって事だ」


黒「つまり、病むほどまでにそれについて考え続け、全てを犠牲にしてまでもそれに近づくための努力をやめないと言う事ですわね。夢にときめくどころか、夢に執着してとことんヤンデレろって訳ですわね」


こたか。「その通りだね。白倉由美さんの物語は恋にヤンデレしている物語が多かったけど、この文章は夢に対してヤンデレしてる訳なんだよ。

って言うか、僕らはさ、ポジティブな気持ちで頑張れば叶う程度の生易しい難易度の事なんざ願ってないんだよ。まんがで言うなら鬼舞辻無惨を倒すとか、この世から巨人を一匹残らず駆逐したいとか、そう言う次元の難易度ナイトメアな事を願ってんだよ。そんな願いを抱いててポジティブでなんていられるかよ。ダサいくらいにみっともなく足掻いて、それでも諦めないで執着し続けるしか無いだろうがよ!」


黒「…貴方らしいと言うか、この文章こそが貴方を作ったと言うか…。まさにベッキーが言ってたように特級呪物でしたわね」


こたか。「だからその言い方禁止!」