終わってしまいましたね、 大河ドラマ『龍馬伝』。


ここ何年かは僕自身いろいろ激動の時代を迎えていて、悠長に大河ドラマを見ている訳にはいかないことの方が多かったのですが、そんな中でも今年は無理矢理時間を作って見るようにしてました。


福山雅治さんの龍馬は人なつっこくて、陽気で、やたらと楽器を弾きまくってて、ふわふわとつかみ所が無くて、見ている人をイライラさせるが、いざ動くと抜群の行動力・実行力で誰にも出来ないことを一気に成し遂げてしまう。そんな感じの龍馬だった。


ただ、そんな風でいて、少しもったいぶりすぎて、腹の底で何を考えているのかよく判らないようにも見えた気がします。最終回の建白書の○○○も、これはこう言う意味ですと添え書きでもしといたら良かったのに、やたらと疑心暗鬼を煽ってしまったようにも見えた。味方のはずの薩長にもそう見えたんだから、敵方の幕府にとっては全く何を考えているか判らない怪物に見えたでしょうね。


このドラマでは龍馬暗殺の下手人は京都見廻組の今井信郎(歌舞伎俳優の市川亀治郎さんが演じてましたね)ってことになっていて、「奴は幕府がしてきたことの全てを無にした」からこそ殺したと言うのが彼の言い分らしい。では何故、自分が(徳川方にとっての)奸賊坂本を殺したのだと触れ回らなかったのか。今になっても真犯人が誰だかわからずじまいになってしまっているのかの事情が語られなかったのは、ちょっとどうかなと思ったりもしたけどね。


でもねえ、幕府がしてきた事って何さ?国を閉ざして狭い島国を自分たちの都合のいいように支配し続けてきただけだろうよ。太平のぬるま湯に浸かりすぎて、日本を弱体化させたんじゃないか?もし幕府が頼りになる存在で有り続けたなら誰も倒幕なんてことは言い出さなかったろうよ。諸外国に太刀打ちできない、頼りないと思われたからこそ、いっそ幕府なんか倒して天子様中心の新しい世の中にした方がいいと思われたんだろうよ。倒幕運動は幕府の不甲斐なさに対する失望から生まれたもので、身から出たさびというものでしょう。ほとんど戦いもせずに大政奉還と言う形で幕府が終わってしまうことは無念かもしれないけど、気が済むまで戦ってたらその隙に諸外国が乗り込んできて下手すれば日本は植民地にされてるところだったんだよ。そうさせない為に龍馬は命を賭けて大政奉還を徳川慶喜に提案したんだろうに。それを自分だってこの国の為によかれと思って働いてきたのに余計なことをしやがってという意識の低い意趣返しで殺したとしか思えないよな。


まあ要するに、次元の低い考えで殺意を抱いた輩を下手人としたことがちょっと不快だった訳ですよ。

僕だったら、下手人は薩長の誰かで、龍馬が大好きでこれからも一緒に国作りをしていきたかったのに、龍馬が「これからは海援隊と共に世界に打って出るから、悪いがそれには付き合っていられないぜよ」と断られたから、ついカッとなって殺したってぐらいの方が納得できるけどねえ。まあ少しヤンデレすぎる考えかもしれないけど。


トータル的に見れば、近年まれに見るほど良くできた大河ドラマだったんじゃないかと思う。竹中直人の『秀吉』や市川海老蔵の『宮本武蔵』みたいにソフト化できない問題も無さそうだし、すぐにDVD-BOXとかが発売されることでしょう。僕も便乗して少しぐらい儲けられるとうれしいですけどね。