2月22日
ニャンニャンニャンの日ということで、ム〜ちゃんが我が家に来た時のお話をしてみます。
ム~ちゃんは、もともとブリーダーさんのところで販売されていた、売り物の猫ちゃんでした。
とってもかわいい子猫ちゃんでしたから、普通ならあっという間に買い手が見つかったでしょう。
・・・でも、こんなにかわいいム~ちゃんですが、重い重い先天性疾患を持って生まれた子だったんです。
げっそり痩せたム~ちゃん。
ム~ちゃんとの出会いは、私がタイに行っている時に、家族が送ってきたこの1枚の写真から始まりました。
あまりの可愛さにすぐに引き取りたい気持ちでしたが、ブリーダーさんが手放すくらいだから、なにか相当な理由があるに違いないと思い、帰国後すぐに浜松まで見に行くことにしました。

厳しい現実!
現地で直接見た印象はとても元気に見えて、ブリーダーさんに聞いた話でも、肛門に少々問題があってウンチを漏らしてしまうことがある程度・・・とのことでしたので、思い切って引き取ることにしました。
・・・が、待ち受けていたのは、あまりにも残酷な現実でした。
引き取ったその足で、地元の獣医さんに健康診断をしてもらうと、気になることがあるのでレントゲンを撮らせてくれないかと言われました。
その時は、まさかあんなことになるとは思いもしなかった…。
これがその時のレントゲン写真。
なんとム~ちゃんは横隔膜に穴が空いていて、本来ならお腹にあるはずの内臓が、ほとんど胸に流れ込んでしまっていたのでした。
流れ込んだ腸が心臓と肺を圧迫していて、いつ突然死してもおかしくない状態だったそうです。(画面下の方)
不自然に取りまわされた腸も機能不全を起こしているから、腸という腸に便が詰まっているのが見えます。
診断してくださった獣医さんには、手術すれば生きる可能性もあるけど、手術代が非常に高額で、仮に治療してもいつまで生きられるかわからない、残念だけど元の場所に帰すことを勧めします・・・と言われてしまいました。
悩んだ末、ブリーダーさんのところに事情を話すと、それでしたら仕方ないので戻してください・・・と言ってくださいました。
でも、その後のことがどうしても気になったので、『帰したあと、この子はどうなりますか?』っと尋ねると、このまま天命だと思ってそのままにします。死ぬかもしれません。
・・・と言われました。

奇跡の連鎖
何も知らないで無邪気に遊ぶム~ちゃん。
こんなかわいい子が死んでしまうなんて耐えられない・・・。
家族と相談した結果、乗りかかった船だから最後まで面倒を見てあげよう、ということになりました。
横隔膜ヘルニアの手術といっても、その手術代には大きなバラつきがあって、安いものは十数万円で出来るものもありますが、場合によっては、それ以上のかなりの高額になることもあります。
手術代が安い場合は、生存率がかなり低くなる可能性があるとのこと・・・。
なんとか生かしてあげたいと考え、家族が色々な情報を集めてきてくれた結果、紹介の紹介で藤沢にある大学病院で手術してもらえることになりました。
ただし、手術代は120万円ほどになるという・・・。
家族と相談した結果、思い切って清水の舞台から飛び降りることにしました。
この病院には、いわゆるスーパードクターと言われる名医がいるのを知り、手術するにあたってなんとかその医師に頼めないかと大学病院にお願いしたのですが、多忙のため不可能とのことでした。
落胆していたある日、大学病院から一本の電話があり、スーパードクターが直接手術してくれることになったとのことでした。
やった!!!!!!
何が起きたのかと驚きましたが、どうやらム~ちゃんのカルテを見たドクターが、この子は私が執刀する!!・・・と言って、あっという間に決まったのだそうです。
驚いて手術前のインフォームドコンセントに出向くと、大勢の研修医と近隣の獣医師が集まっていました。
どうやら非常に珍しい症例のため、多くの医師に見学させて学ばせるために引き受けたようでした。
手術は3時間ほどで無事に終了。
手術後の医師の言葉に絶句しました。
横隔膜ヘルニアというのは、先天性や事故により横隔膜に穴が空き、そこから内臓が胸腔内に入ってしまうものなのですが、ム~ちゃんの場合は、なんともともと横隔膜が無かったとのこと!!!
????
横隔膜が無い!?
いままでどうやって呼吸してたんだろ?
どうやら詰まった肝臓が横隔膜の代わりをして、かろうじて呼吸をしていたようなんです。
なので、いつ死んでもおかしくない状態だったみたいです・・・。
そんなム~ちゃんですが、スーパードクターが驚異のテクニックを使って治療くれたことが、後でわかりました。
なんと横隔膜が無いなら作ってしまおう・・・と、腹腔内の組織を薄く切って、横隔膜を作ってしまったそうな?
通常の横隔膜手術なら人工の膜を縫い付けるそうなんですが、『生体組織で作られているから、人工の膜よりいいよ。』 『あ。そうそう。肝臓の血管が変なところにつながっていたから、ついでに直しておいたよ。』・・・だって。
その場に見学に来ていた別の獣医に、『意外と簡単に治っちゃいましたね』・・・と言ったところ、『いやいやいや、普通こんなのできないから・・・。』と言っていました。
しかも、この肝臓の血管が他の血管につながっていると、肝臓から分泌される物質のためにアンモニア中毒になって、これもそうとうにマズイことになっていたはずとのことでした。
なるほど・・。
スーパードクターなわけですね。
ム~ちゃんはいろいろな奇跡によって、命がつながることになりました。
その後も、ご飯を食べるのも命がけでしたが・・・。
日に日に元気を取り戻していきました。
こんなに小さな体に、大きな傷跡が残ってしまいましたが、生きてくれて本当に良かった・・・。
・・・が、ここでもう一つ問題が発生。

第二の試練
ながらく一人っ子で暮らしていた先住ネコのコタちゃんが、ものすごくヤキモチを焼いて、執拗にム~ちゃんを攻撃するようになってしまいました。
コタちゃん自身もノイローゼのようになってしまい、感情のコントロールができずに、私たちにまで牙を向けるようになってしまいました。
手術したばかりのム~ちゃんに、万が一のことがあってはいけないので、一瞬たりとも気が抜けない状態が数か月間続きました。
ただム~ちゃんは、これまでツラいことが多かったせいか、メンタルが非常に強かったりしました。
コタちゃんに張り手をくらっても、凄まれても、コタちゃんと友達になりたくて何度でもアタックしていきます。

勝ち取った幸せ
もともとブリーダーさんのところで育っていたから、社交的な性格だったんですね。
明るいム~ちゃんの戦いが1年半ほど続いたころ・・・。
コタちゃんの心の氷が溶けて、ある程度までは心を許すようになりました。
まだここまでが限界ですが、かなり進歩したものだな~っと、胸をなでおろしている今日この頃です。

その先の未来へ
そして今日のム〜ちゃん。
元気になったム~ちゃんですが、腸の機能が弱いため、数日に一回浣腸や摘便の介護が必要ですが、なんとか毎日頑張って生きてくれています。
よちよち。
ム~ちゃんが少しでも快適に生きていけるように、私自身も進化していく必要があります。
医師の行う敵弁技術や浣腸のやり方を研究して実践し、だいぶ不快な思いを減らしてあげられるようになってきました。
一日でも長く、残りの猫生を快適に過ごして欲しい。
コタちゃんと、末永くいつまでも仲良くね!