「こうして社員は、やる気を失っていく」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

 

 

「こうして社員は、やる気を失っていく」(松岡保昌)

 

 

HR系の本の多くが「やる気をいかに上げるか」という視点で書かれていて、本書のように「やる気をいかに下げないようにするか」という視点は見落とされがちだと思うが、実は重要な視点だ。このユニークな視点とキャッチ―なタイトルが本書の商業的成功のポイントだろう(内容は実際のところ他の本と似たり寄ったり)。

 

参考になった点としては、会社で使っている言葉が企業や組織の文化をかたちづくってしまうという点で、改めて気をつけようと思った。

 

企業文化を磨く、社員の当事者意識を高める、といったことの重要性は本書でも指摘されていて(最近読んだ成功企業にも共通するポイントだ!)、全く同感なのだが、言うは易し、実現するは難し、である。本書視点のように、ネガティブな言葉を使わないなど、まずは社員のやる気を下げないようにすることから気をつけるとよいかもしれない。

 

 

 

以下、備忘

 

 

モチベーションを高めるためにやるべきは、まずモチベーションを下げない、ということです。

 

 

良くも悪くも「企業文化」にふさわしい人が集まる

企業文化には大きく2つの力がある。
①違うタイプの人をも、いつしか同じような考え、行動に染めてしまう力
②磁石のように、似たタイプの人々を引き寄せる力



強い会社とそうでない会社を分かつのは、社員の「当事者意識」

自ら考えて動く。積極的にチャレンジする。社員の「主体性」が生まれる大前提となるのが「当事者意識」。
 

どのようなときに、人は、仕事を「自分事」としてとらえるのか?
それは、仕事が会社のためだけではなく、自分のためでもあると心の底から思えるとき。この仕事は、人生や自分のキャリアにとっても、意味や意義があり、とても価値があることだと思えるとき。
そうでなければ、給料のためと割り切って働いたり、受け身で最低限の業務をこなすだけになる。



やりがいを感じるとき


・目標を達成したとき
・仕事をやり遂げたとき
・自分の成長を感じたとき
・興味のある仕事ができるとき
・仕事で社会に貢献する実感を持てたとき
・尊敬できる人と一緒に仕事ができるとき
・新しい仕事にチャレンジするとき
・チームで仕事をするとき
・裁量権があるとき
・影響範囲が大きい仕事を任されたとき

人はお金だけでなく「見えない報酬」で突き動かされている。



中でも、多くの人に共通する「やりがい」2つ

①「仕事の目的」
最終的に世の中とどのようにつながっているのかを実感できるということ。つまり、「社会的価値」の理解。

②「承認」「称賛」「尊敬」
感謝の言葉や気持ちを伝え合う文化はあるか。「仕事はやって当たり前」「給料をもらっているのだから、それぐらい当然」と考えているようなら、その組織や会社は危険で、メンバーのモチベーションは下がり続ける。「社会的動物」と言われる人間にとって、周囲との関わりは、それぐらい大事。
 

 

 

上司と部下との間の「視野」と「視座」の違いに注意

上司が自分の目線で理解して当たり前だと思って出した指示に対し、部下の「視座」では上司の期待どおりの解釈ができず、部下なりに一生懸命にやったにもかかわらず期待に沿った結果が出ない、ということはよくある。「視野」や「視座」の違いを意識・理解したコミュニケーションを。
 

 

 

組織をかたちづくるのは、自分たち1人ひとり

ふだん何気なく使っている言葉から、組織の文化はかたちづくられる。
ネガティブな言葉やあきらめの言葉が飛び交っているとしたら、それが企業文化になっている。
 

NGワード例
「うちの会社の体質は古い」
「うちの会社はスピードが遅い」
「うちの職場は終わっている」
「どうせうちの会社では、新しいことは受け入れられない」
「上司にこんなことを言っても、どうせムダ」
「頑張ってもバカを見るだけ。適当に力を抜いてやればいいんだよ」
「あの部署は、いつも協力しないよね」
「部長は、役員が怖くて、何も言えないんだ」
「よくうちの会社に入ったね。人事にだまされたな(笑)」

 

 

 

 

「社員がやる気を失っていく上司」に共通する10の問題

1 目を見て話さない。目を見て話せない
2 理由や背景を説明しない
3 一方通行の指示(双方向コミュニケーションがとれない)
4 コントロールできる部分を与えない(1から10まで指示)
5 話を聞かずに結論を出す
6 意見も提案も受け入れない
7 言うことに一貫性がない
8 感覚だけで評価する(結果を出しても評価されないと思わせてしまう)
9 失敗を部下のせいにする
10 部下の仕事を横取りする


「組織が疲弊していく会社」に共通する15の問題

1 個人が仕事を抱えすぎている(不平等で不満が多い)
2 仕事を押しつけ合う(全社的視点、協働の意識がない)
3 物事を決められない(コミュニケーション機能が不全)
4 前例と成功体験から抜けられない
5 「理念」が言葉だけ
6「挑戦」「改革」……空手形の言葉ばかり
7 社長がめちゃくちゃ忙しい(社員を導くリーダーが不在)
8 管理職が逆ロールモデル(めざすべき人物が不在)
9 いつもピリピリしている(不機嫌、不安、不快がはびこる)
10 マイナス要因の犯人探しに執心(不信感と不寛容な組織)
11よくわからない人事異動がある
12 いまだに長時間労働が美徳
13 女性が出世しない
14 子育て、介護で働きにくい(働きやすい制度の不足・不備)
15 長期的な展望を描けない(キャリア設計が不安・不明)