「だから、スターバックスはうまくいく」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

 

「だから、スターバックスはうまくいく」(毛利英昭)

 

 

スターバックスの成功要因の鍵が人材であることはわかった(「スターバックス物語」「スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?」)。

 

その人材マネジメントについて、つっこんで具体的に知りたいと思い、この本も読んでみた。

 

スターバックスの人材マネジメントの大前提は、経営理念や企業文化で社員を魅了し、同じ価値観を共有・浸透させること。誤解を恐れずに言えば、ある意味「宗教的」。しかし決して悪い意味ではなく、むしろ「いい会社」の絶対条件に近い。(逆に、この前提が崩れている会社、つまり、ビジョンなどなく、何のために働いているのか社員の価値観がバラバラな会社は話にならないというレベル)

 

この前提の上で、スターバックス独特の具体的制度やルール ―― 自律性重視(マニュアルに頼らない)、コーチングを教育プログラムに取り入れる、表面的な成果よりも一段深い層のコンピテンシーを評価、等 ―― が、スターバックスのビジョンであるとか事業特性に相性よく、効果的に機能している。よくできているな、という感想。

 

このような、スターバックスのビジョン、経営理念、企業文化に基づいた人事制度・教育制度を社員が受け入れることによって、一回りしてスターバックスのビジョン、経営理念、企業文化、がさらに深く社員に浸透する、というスパイラルになるのではないだろうか。

 

 

「だから、スターバックスはうまくいく」という本書タイトルは、単にキャッチ―なだけでなく、本書内容をなかなか的確に表現している。あながち盛ってもいない。

 

 

 

以下、備忘

 

 

■ビジョンドリブンの人材マネジメント

スターバックスが大切にする哲学「One cup at a Time, One Customer at a Time」(一人ひとりのお客さまに一杯ずつ心を込めてコーヒーをお出ししよう)

採用は、価値観に共感できる人。(例えば、コア・イデオロギーの「感動経験を提供して、人々の日常に潤いを与える」という価値観)



■個人の自律を前提とした組織を目指す

スターバックスにマニュアルはほとんどない。「ミッションステートメント」を憲法として、自分は今何をすべきなのか、マニュアルに頼らず自分で考えて行動する人たちによって支えられている。

「One cup at a Time, One Customer at a Time」には、有名な「Moment of Truth」(真実の瞬間)という言葉の本来の意味である「闘牛でとどめの一突きをする瞬間。決定的瞬間」と同じ思いが込められているのではないか。

サービスは、突然必要になり、その一瞬を逸すると価値がなくなってしまう。個人の自発性が鍵となる。本当にお客様のために尽くすという気持ちや意欲なしには、顧客の心を捉えるようなサービスは実現できない。まさに“真実の瞬間”。

マニュアルに頼ったサービスでは限界がある(というか無理)。



■人材育成においてコーチングを重視

すべてのパートナーは学ぶ人であると同時に学ばせる人、教える人となり、双方向の学習で相互に補完する関係を作り、互いの能力を高め合うことを大切にしている。

「彼もきっとやればできるんだ」と相手の力を信じて教育する。人間の能力はいつ花が開くかわからない。人間の能力は緩やかな上昇線をたどるのではなく、ある日突然飛躍するもの。教育には忍耐が必要。誠意をもって当たれば、きっと相手の心を動かすことができる。

急速に店舗拡大する中で、店舗のレベルを下げないように人材育成することに力を入れてきた。この点から、現場でのコーチングは非常に重要。

早い段階(入社2、3ヶ月)からコーチング技術を教育し、学んだことをすぐ次に入ってくる人に教えられるようにしている。



■コンピテンシーによる評価

コンピテンシーとは、成果に結び付く行動特性。

成果に結び付く行動自体やそのプロセス、努力の度合いを評価対象とする考え方。

6つのビジネス姿勢に区分。コンピテンシーレベルは7段階で、それぞれ求められるレベルが明文化されている。

 

 

 

 

 

 

コーチングの定義は「相手の持っている能力とやる気を引き出し、目標に向けてサポートするためのコミュニケーション技術」

 

 

 

 

 コンピテンシーについては「人を選ぶ技術」もご参照

 

 

 

 

 

 
 
以下、余談

 

タリーズでカフェラテ。こちらもおいしい。スターバックスラテの味はそろそろ忘れてきてしまったが、スタバの方が好きかもしれない。店員さんのオーラみたいなものもスタバより少し落ちるように感じた(というか、いたって普通の店員さんだった)。こんなふうに感じるのは、スタバびいきバイアスのせいもあるだろう。自分も洗脳されてきたのかもしれない。