「スターバックス成功物語」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

 

 

 

「スターバックス成功物語」(ハワード・シュルツ、ドリー・ジョーンズ・ヤング)

 

 

 続けざまに、世界的に大成功している起業家の自叙伝を読んでみた。

前回エントリーの「SHOE DOG」は、自分自身ランナーでありナイキのシューズも愛用しているので、テンション高く楽しく読んだ。共感度も最高レベル。

今回の「スターバックス成功物語」は、自分自身コーヒー通でもなければスターバックスに特別な想い入れもないので、テンションは中立、むしろ冷静、あるいは少し斜に構えて読んだ。

以前から、品質にこだわり、社員を大切にする会社というのは知っていたが、自叙伝では商業主義を美化している部分もあるのではないか、と勘ぐったりした。

コーヒーを愛し、事業拡大には無関心だった創立者ジェリー・ボールドウィン氏の方が、超大企業に成長させた著者のハワード・シュルツ氏より、実は幸せでいい人生を送っているんじゃないか、とか思ったりもした。

いずれにしろ、数あるコーヒーショップの中で、圧倒的に世界中の人々に支持されている企業に成長させたハワード・シュルツ氏の信念の強さや経営手腕は高く評価するべきだし、実際いろいろと学ぶところはあった。「人を選ぶ技術」にも書いてあったりしたが、人生における過去の劣等感がハワード・シュルツ氏の原動力だと思う。


ただ、本書を読み終わってもなお、なぜスターバックスがここまで人気があるのか、やっぱりピンと来ないので、いろんなお店に何度か足を運んだ。

すると… いまさらながら… スタバが好きになってきた。

本書に「ロマンチックな味わい」の魅力があると記述があったが、スターバックスラテを飲んでみて、「なるほど、こういうことか!」と一瞬で好きになった。

また、(前々から感じていたことではあるが)店員の皆さんが例外なく生き生きとしていて、サービスを受けていて気持ちが良い。友達にしたいタイプの人たちだ。これも、またスタバに行きたくなる要素のひとつ。

家庭でも職場でもない「第三の場所」というスタバのコンセプトは有名だが、確かに、煩わしい時間から解放されて、一人で心からくつろげる場所になりうると改めて感じた。そして、そういう空間・時間の大切さを再評価する機会にもなった。

店員、調度品、照明、音楽、客層、など、これが決め手というのはないが、(決して広くないのに)なんだか落ち着くし居心地が良い。家庭でも職場でもない、という点では居酒屋やレストランも第三の場所と言えなくもないが、「一人」で本当にリラックスできる場所・集中できる場所、というのは案外限られているものだ。その第一候補がスタバになりうる。



品質の良い商品を作る、心地よいサービスを提供する、社員を大切にする。

 

どこの会社も目指していることだ。結局のところ、どこまで徹底できるか、どこまで信念を貫けるかだろう。その点で、ハワード・シュルツ氏は突き抜けた人物だったということだと思う。

グーグル、アップル、ナイキ、などなど企業文化を社員に浸透させている会社は業界を問わず強いと思う。かつてのソニーやホンダも強かった。スタバも独特の企業文化を確立し、社員への浸透に成功した。スタバの企業文化に魅せられた社員が集まり、「類は友を呼ぶ」ごとく同じ価値観を持った社員がさらに集まる。そうやって、社員にも、顧客にも愛される企業として成長してきたのかな、と思う。
 

 

 

以下、備忘

 

 

企業が草創期の精神を失わずに大きく成長するには、利益の追求を第一とするのではなく、正しい価値観と人材を基盤とした経営が必要である。
その要は真心にほかならない。私は一杯のコーヒーに真心を注いできた。スターバックスのパートナーたちも同様だ。顧客はそれを感じて必ずこたえてくれる。



私の個人的な経験からすれば、生い立ちが貧しければ貧しいほど想像力を働かせて、あらゆることが可能な世界を夢想するようになるのだと思う。



1971年

ジェリー・ボールドウィンがスターバックスを開店。創立者たちは純粋なコーヒーの信奉者であり、本物のコーヒーを知る少数の顧客に喜んでもらえれば満足した。

「コーヒーの品質を高めるのが目的であって、事業を拡大するつもりはありません」(ジェリー・ボールドウィン)

スターバックスは単なる良質のコーヒーではなく、創立者が魅せられた深煎りコーヒーの風味を基盤にしたおかげで、ほかのコーヒー店とはひと味違う本物になれた。


1982年

ハワード・シュルツ、スターバックスに入社


1983年

ハワード・シュルツ、ミラノに出張。イタリアのコーヒー・スタンドの技術と情緒を知る。

どの店も極めて個性的だが、一つだけ共通点があった。顔なじみのお客同士の仲間意識と見事な腕を持つバリスターだ。

イタリア人は毎朝、行きつけのコーヒー・スタンドに立ち寄り、自分用の一杯のコーヒーを楽しむ。バリスターは素晴らしいコーヒーを入れる芸術家、人々から尊敬されている。


しかし、ジェリー・ボールドウィンは「われわれはコーヒー焙煎業者なんだ。レストラン業をするつもりはないよ」


1985年

ハワード・シュルツ、スターバックス退社、エスプレッソ・コーヒー店のイル・ジョルナーレ設立。

スターバックスが15万ドル出資。「われわれ自身が参入したい事業ではないが、応援させてもらうよ」(ジェリー・ボールドウィン)

私は投資家たちに、イル・ジョルナーレは商品に再投資しているのだと訴えた。昔からどこにでもある商品、つまりコーヒーに再投資して情緒と心の交流を織り込むのだ。何世紀にもわたってコーヒーがはぐくんできた神秘な魅力を再発見し、その繊細な雰囲気と形式、技術で顧客を魅了することができる。
これとよく似たことを実行した会社は、私の知る限りナイキしかない。スニーカーはもちろん商品だったが、値段の安い規格化された実用品で高級品のイメージはなかった。ナイキの販売戦略は、まず超一流のランニングシューズをデザインして、次に、このシューズを使えば最高の記録が出せる、他のシューズとは比較にならない、という雰囲気を盛り込むというものだ。このアイデアが成功して、スポーツ選手以外の人たちまで競ってナイキ・シューズを求めるようになったのだ。


1987年

イル・ジョルナーレがスターバックスを買収、社名をスターバックス・コーポレーションに変更。

私は自分が望む究極の企業像をはっきりと思い描くようになった。社員が互いに尊敬し合う社風を育むこと。これはスターバックスの事業を支える根幹なのである。全社員が共通のビジョンを抱かなければ、われわれの目標は達成できない。理想を実現するためには、社員を大切にし、鼓舞し、長期的な価値の創出のために共に働く人々と利益を分かち合う組織の確立が必要なのだ。


1988年

全パートナーに正社員と同じレベルの健康保険を適用。この決定は、スターバックスの歴史の中でも最上の選択だったことが明らかになった。


1991年

ストックオプション制度「ビーンストック」実施。

■スターバックス・ミッション・ステートメント
・働きやすい環境を提供し、社員が互いに尊敬と威厳をもって接する。
・事業運営上の不可欠な要素として多様性を積極的に取り入れる。
・コーヒーの調達・焙煎・流通において、常に最高級のレベルを目指す。
・顧客が心から満足するサービスを提供する。
・地域社会や環境保護に積極的に貢献する。
・将来の繁栄には利益率の向上が不可欠であることを認識する。


1992年

株式公開


1994年

フラペチーノ販売

ペプシと大量販売向けコーヒー飲料開発会社を設立


伝統的なマーケティング理論によれば、手当たり次第にブランドを使えば、人々に認知されるよりも、むしろ陳腐なブランドに成り下がってしまう。われわれは、コーヒーの専門知識に関しては高い評価を得ており、この知識を生かすことができる最高級品にだけスターバックスのブランドを使用してきた。(中略)
いつまでも現状にあぐらをかいている企業ではないことをわかってほしいと思ったのだ。新製品は、スターバックスが自己変革に力を注ぐ企業であることの証なのである。






なぜスターバックスが人々の心をとらえているのか?

・ロマンチックな味わい(ありふれた一日にエキゾチックなコーヒーでロマンチックな輝きが加わる)
・手の届く贅沢(ブルーカラー労働者も医者も、自分自身へのちょっとした御褒美として)
・オアシス(集中できる静かなひととき、ささやかな逃避行、気分を爽やかにしてくれる場所)
・ふだん着の交流(社交的な雰囲気を味える場所)




人間は、形式張らない社交の場に集い、仕事や家庭の問題を忘れ、くつろいだ雰囲気で話をしたいという欲求を持っている(社会学教授、レイ・オルデンバーグ)。
ドイツのビアガーデン、イギリスのパブ、フランスやウィーンのカフェは、日常生活のはけ口の場となっている。そこは中立地帯であり、皆平等で、会話が主たる活動となる。




絶えず変化しつづけるこの社会において、最も永続性のある強力なブランドは真心から生まれる。それは本物であり、必ず生き残る。

たとえばナイキのことを考えてみよう。フィル・ナイトは、ナイキのシューズを履くと選手の記録が伸びることを強調し、信頼性という基礎の上にナイキの名声を築き上げたのである。ランニングシューズがファッション化し、日常的に着用されるようになった後も、ナイキはずっと技術面での卓越性を強調しつづけていた。




かつては、スターバックスで最も重要な部署はマーケティングだと考えていた。だが、今では人事部だと断言することができる。スターバックスが成功したのは、われわれが採用し、教育し、昇格させた人々のおかげなのだ。




こんな状況の中で、なぜ高い目標を目指すのか。
あまりにも多くの人たちがしり込みしているのだ。アメリカでも、どこの国でも月並みで満足する人たちが増えている。




共通の目標を目指す多くの人々を結集して鼓舞激励し、内に秘められた能力を引き出してあげれば、互いに協力して奇跡を生み出すことができる。
それには勇気が必要だ。そんなことは実現不可能だと批判する人たちが必ず出てくる。あなたの見識をけなす人たちもいるだろう。あなたの事業の成功を否定する人がいるかもしれない。

一人だけで目標を達成しても決して心は満たされない。チームでレースを勝ち抜いてこそ、大きな喜びと報酬を分かち合うことができるのだ。(中略)ともに勝利した多くの同志と一緒に喜び合いたい。だれもがそう願うはずである。




人々とともに獲得する成功ほどうれしいものはない。

 

 

 

 

 

 

 

※補足

 

朝、ドリップコーヒーを飲み、昼にカフェミストをワンモアコーヒーで飲んだ。ドリップコーヒーは特別おいしいとは思わない(セブン・イレブンで問題なし)。カフェミストは、見た目スターバックスラテと似ているが、濃厚さに欠け、安っぽい感じ(安く飲めたからそう感じた可能性はあり)。

 

 

スターバックスラテは、個人的にツボにはまるおいしさだった。癒された。
 

 

スターバックス ブロンド ラテ with オーツミルクはスターバックスラテと比較し何か物足りない。本書で、シュルツ氏がエスプレッソの味を損なうノンファットミルクの導入に反対したエピソードがあったが、「こういうことなのかな」と感じた。しかしながら、別の機会に店員さんに聞いてみたところ、オーツミルクは健康にいいということではなく、味が違うだけとのことだった。
 
 

 

キャラメルマキアートは、まさにロマチックな味わい。しかし、自分にとっては甘すぎ。スターバックスラテを飲んだ時の濃厚さ、味わい深さ、が忘れられない。他のドリンクも試してみたい。この1ヶ月中に、全ドリンク制覇を目指してみるつもりだ。
朝7時に利用したこのお店では、テーブルにカップ跡の汚れが残っていて、少しがっかり。