「ワークマン式「しない経営」」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「ワークマン式「しない経営」」(土屋哲雄)
 
 
「ワークマンは 商品を変えずに売り場を変えただけで なぜ2倍売れたのか」 を読んで、本格的にワークマンのファンになった。
 
この1年で、ランニング用のウエアは5点買ったし、ウィンドブレーカー、ロードバイク用のトップス、スキーウェア用として防水のアウター上下、子どものシューズやTシャツなど買った。品質はまずまずの満足水準、価格は十分満足水準なので、結果とても満足している。
 
不満があるとすれば、電車や徒歩で行ける店がない(いつもロードバイクか車)、品揃えのわりに店が狭く商品を選びずらい(サイズがないこともよくある)、駐車場が小さい、というところだろうか。ただ、これも低価格とトレードオフの関係にあるのだろうと理解している。
 
低価格を実現する施策を様々やっているとはいえ、それにしても価格は圧倒的に安い。2900円の厚底シューズの購入を検討しているが、スペック的にはナイキやアシックスで1-2万円するシューズと同レベルっぽい。安すぎて、本当に品質は大丈夫なのだろうか、と猜疑心を持ってしまう。そこで、もっとワークマンのことを知りたいと思って本書も読んでみた。
 
 
低価格のワケとして今回改めて理解したことは、PB製品は5年継続販売、固定客の存在(&エクセル経営)により需要予測精度が高い、といった点が大きいのではないかということ。
ユニクロなどは、定番商品であっても毎年ちょっと改良した新製品を出すのでシーズン中に売り切らなければならないが、ワークマンの製品は5年継続販売なので、売れ残っても翌年定価販売できる。そもそも需要予測精度が高く、かつ少なめにつくるので売れ残らない。5年間製法が変わらず計画的・安定的生産が可能なのでメーカーも安心だ。

実際、店に行ったとき商品切れでもお店は気にしていないように感じた。店舗が狭いので、そもそも余裕をもった在庫はできないだろう。結果、不良在庫はほとんど発生しないのではないか。



読み終わって、ワークマン好感度も、2900円厚底シューズ購入前向き度も、一段と高まった。ナイキやノース・フェイスに高いお金を払う人は、結局のところ「見栄」「自己満足」もしくは「安心感」が欲しいのだろう。厳密な機能性はナイキにかなわないのだろうが、(プロアスリートならともかく)市民ランナーレベルであればワークマンで十分か。

今年3月のマラソンは、ナイキのズームフライ5(定価19800円)で記録3時間40分、自己ベスト更新ならなかった。来春のマラソンは、アシックスのマジック・スピード3(同16500円)かワークマン(同2900円)か、どのシューズで臨むことになるのかまだわからないが、あえてワークマンで自己ベスト更新に挑戦してみたい気分だ。



以下、備忘



◇社員のストレスになることはしない
残業しない。
仕事の期限を設けない。
ノルマと短期目標を設定しない。

◇ワークマンらしくないことはしない
他社と競争しない。
値引をしない。
デザインを変えない。
顧客管理をしない。
取引先を変えない。
加盟店は、対面販売をしない、閉店後にレジを締めない、ノルマもない。

◇価値を生まない無駄なことはしない
社内行事はしない。
会議を極力しない。
経営幹部は極力出社しない。
幹部は思いつきでアイデアを口にしない。




「製品がよければお客様は自然にくる」
「お客様が自然にこないような製品は出さない」



ワークマンのお客様は値札を見ない(機能やサイズはタグで確認するが)。これは大変な信頼感。他社製品に比べて機能がよく、安いことをお客様が確信している。じつは製品価格は値札を見なくてもお客様にわかるよう規則性を持たせている。
例:普通の防寒ブルゾン1900円、耐久撥水防寒ブルゾン2900円、完全防水ブルゾン3900円



さらなるブルーオーシャン市場候補
「ワークマンシューズ」980円と1900円の靴の2プライスショップ
「ワークマンレイン」雨対策品専門ショップ



圧倒的な製品価値にするため、製品開発部門だけは人員を5年間で3倍に増やし、外部からデザイナーを呼び込んだ。



アウトドアウェア市場の市場調査を依頼した際、「ワークマンはブランド品ばかりのアウトドアウェア市場には参入できない」「ブランド力がないので購買対象にならない」という結果が出た。市場にはノース・フェイス、パタゴニア、コロンビア、など有名ブランドがずらり揃っている。

しかし、市場を細分化してみると、「低価格」×「高機能」に巨大な空白市場が見つかった。



PB製品は5年継続販売が原則。
1年目は少なめにつくる、2年目は需要予測を行う(どちらかというと少なめにつくる)、5年継続生産販売させる中で色変更や機能強化などの微調整をすることもある。
競合が数年追いつけないダントツ製品の開発が前提。




仕事の期限は設定しない
無理な期限を設定すると、締切を守ること自体が目的化し、仕事の質が下がる。


ノルマや短期目標は設定しない
ストレスからミスが増え、結果は間違いなく悪くなる。短期で結果を出そうとすると、どうしても仕事はこじんまりとしてしまう。


頑張ってできても意味がない
できる人や異常に頑張った人にしかできないような仕事のやり方は、他の人に引き継げない。誰がやっても売上が伸び続けるしくみが重要。


顧客管理はしない
マスマーケティングが基本。最高のマーケティングは、自然に売れる製品だけをつくること。いい製品をつくれば、顧客管理をしなくても売れる。逆に、社会の役に立たない製品をマーケティング技術で売るのは反則だ。


「エクセル経営」
全社員参加でないと意味がない。外部からデータサイエンティストなど専門家を迎え入れるというのは最悪の一手(外から来て本気でやる人はまずいない)。