「心。」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「心。」(稲盛和夫)

 

 

久しぶりに稲盛和夫さんの本を読んだ。過去に読んだ本の集大成的内容を、懐かしみながら読んでみようかな、と。

 

一時期(10-20年ほど前か)、稲盛さんの本を結構読んだ。当時、「アメーバ経営」といった理論的なことから、哲学、精神論まで、経営の考え方や姿勢について感服しながら読んだ。

 

最近、「科学的根拠」とか「研究結果」とか「心理学的」といったことをベースにした本を読むことが多くなったような気がして、そういった次元とは異なる、宗教っぽい、昭和の根性論っぽい、そういうノリの理論や言葉を、また読んでみたくなった。

 

ゆとり社会が時流となるなか、少々ブラックなイメージもつきまとう稲盛氏の考え方は、昔読んだ時ほど共感しないかもしれないな、とも思いながら読み始めた。

 

しかしながら、京セラ、KDDI、JAL、と経営実績は申し分なく、文句なしの日本トップレベルの経営者である。そういう方の言葉は、(ほかの人の本に書いてある内容と似たり寄ったりだとしても)やっぱり心に響くところがあった。

 

 

たまには、こういう本も読むべきだな、と思った。

 

 

 

以下、備忘

 

 

 

人生の目的とは、まず一つに心を高めること。魂を磨くことにほかならない。

 

 

少年期から不安と挫折の連続。そんな中、不平不満ばかり唱えていたときは何事もうまくいくことがなかった。しかし、運命を素直に受け入れ、肚を据えて仕事に没頭しだしたとたん、人生の流れは逆風から追い風に変わった。

 

 

怪我をしたら、「ああこれくらいの程度の怪我ですんでよかった。体が動かせないほどの惨事にならずにすんだ」と思う。病気であっても、「これぐらいの病気で、手術でよくなってよかった」と喜ぶ。災難を「喜んで」受け止めようとすることが大切。

 

 

不平不満を並べるだけでなく、相手のおかげで今の自分があることを謙虚に受け止め、感謝の思いを持ち続ける。それによって、その後の運命は大きく違ってくる。

 

 

 

宇宙の大原則は「成長発展」。宇宙には、一瞬たりとも停滞することなく、すべてのものを進化発展させてやまないエネルギーで満ちている。

 

もう一つの宇宙の大きな働きは「調査を保つ」こと。すべてが成長発展するばかりでは、巨大になりすぎるものが出てきて、全体のバランスがとれなくなてしまう。拡大しすぎたものは、調和を保つ働きに沿って、崩壊の方向へ導かれる。それもまた宇宙の厳然たる法則。

 

人も企業も、まずは「成長発展」の法則に従って、懸命に努力を重ねる者はおのずと発展する。しかし、謙虚さを忘れ、自らの欲望のまま拡大ばかりをめざしていると、バランスを崩してしまう。極端に大きくなりすぎたものは、宇宙の法則によって崩壊させられる。

 

成長を重ねるにしたがって、「調和」することが大切になってくる。そのために必要なのが「やさしい、思いやりの心」、すなわち利他の精神。

 

 

 

「足るを知る」生き方は自然界が教えてくれる。

 

たとえば、百獣の王ライオンであっても、一度狩りをして腹が満たされれば、一週間ほどは獲物がそばにいても襲うことはしない。欲のおもむくままにむさぼっていたら、いずれ自分たちの食糧事情を自分であやうくしてしまうことを本能的に知っている。

 

アフリカで焼き畑農業で作物を作っている現地人は、連作を繰り返すと土地の養分がやせ細ってしまうことを知っている。制限なく森を焼けば、自然の力を壊して、それが自分たちの首も絞めてしまうことを知っている。原始的な環境に置かれた人たちは「足るを知る」節度を心得ている。

 

 

 

自分の考えと哲学を理解してもらうため、社員と激論を交わしたこともあった。どうしても理解してもらえなかった場合、安易な妥協策を持ち出すことはせず、会社を辞めてもらうこともしばしばあった。思いを合わせ、心を一つにすることは、それほどまでに大切。

 

 

経営者に必要なのは、けっしてあきらめない強靭な意志、どんな状況の中でも活路を見いだすネバーギブアップの精神。

 

 

どんな立派なことをいっても、それを説く人間が立派でなければ、その内容は聞く人の心には入っていかない。何をいうかより、だれがいうかのほうが大切で、立派だと思われていない者が立派なことを説いたところで全く説得力はない。

 

けっきょくのところ、私自身が尊敬を集めるにふさわしい人間に成長しなければ、「ともにがんばろう」といったところで、その熱意はいっこうに伝わることはない。そう思いいたってからは、自らの人格を高めるための哲学を身につけるべく、読書と勉強の日々が始まった。

 

 

あふれるほどの情報が間断なく入ってくる、仕事に追われ頭の中はめくるめく思考の渦がおさまらない、そのような心にざわめく波をしばし鎮めて、明鏡止水という状態になる機会をつくってみる。瞑想でも座禅でもよい。一日のうちわずかでも、心を静め、おだやかに保つ時間をとる。

 

 

「成功を手にできないでいる人たちは、自分の欲望をまったく犠牲にしていない人たちです。もし成功を願うならば、それ相当の自己犠牲を払わなくてはなりません。」(ジェームズ・アレン)

家族との楽しい時間を犠牲にするぐらいでないと経営などできるものではないのも事実。家族にはだいぶさびしい思いをさせてしまった。裏を返せば、仕事に邁進し没頭しているのを、家族が許して、あたたかく見守ってくれたおかげ。そんな家族をもてたことをうれしく、また誇らしく思い、深い感謝の念を感じざるをえない。

 

 

どんな人でも、与えられているのはいまこの瞬間という時間しかない。そのいまをどんな心で生きるかが人生を決める。人生とは実にシンプル。利他の心をベースに、日々の生活の中で、できうるかぎりの努力を重ねていく。そうすればかならずや運命は好転し、幸福な人生が訪れる。