「The Long Game」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「The Long Game」ドリー・クラーク (著), 伊藤 守 (監修), 桜田 直美 (翻訳)
 
“タイパ”なる言葉が流行ったりと、世間はとかく短期で結果を出そうとする傾向にある。しかし、GOODではなくGREATな結果を出すには、やはり長期的な取り組みが必要だ。
 
結論としては、至極当たり前と言えば当たり前ではあったが、改めて心に刺さる内容の本だった。信念を貫く心構えや技術的なことも、参考になる部分があった。
 
時間軸として「7年」がキーワードとして出てくる。読了後としては納得感のある時間軸だ。もっと納得感がある時間軸は「人生」とかかもしれない。これくらいの時間軸で、自分の価値基準からぶれることなく、本当に重要なことを見極め、どっしりと取り組んでいければ、理想だろう。最大のハードルは成果の出ない時間帯をいかに「戦略的忍耐」で乗り切るか。
 
 
「ロングゲーム」。読み終わってみて、このワードが妙にしっくりきている。悲壮感を持つことなく、人生の「ロングゲーム」をプレイしていきたい。
 
 
本書で取り上げられているエピソードでは、ジェフ・ベゾス氏とダグラス氏の言葉が響いた。
 
振り返ってみれば、アマゾンは上場後なかなか利益が出ず、株式市場から黒字化の結果をせかされたが、ジェフ・ベゾス氏は赤字決算と積極投資を長らく続けた。長期的な視点と固い信念があったからこそ、現在のアマゾンの成功があるのではないか。
 
 
以下、備忘
 
 

■スケジュールと心に余白をつくる

 
 
魅力的なことに対しても「ノー」と言う
 
興奮度が10点中9点なら「ノー」。時には10点でも「ノー」が正しいこともある。
1年後(あるいは5年後10年後)の自分の気持ちを想像すれば、よりよい決断をすることができる。
「これをしなかったら1年後に後悔するだろうか?」
 
 
 
■明確な目標、目標を達成する技術
 
 
正しい目標を設定する
 
自分の「興味」に最適化する(「お金」ではなく)
なにをすべきか迷ったら「興味のあること」「面白そうだと思うこと」を選ぶ。長期的な思考とは12歳の時に決めた目標に向かって計画を実行することではない。
 
どんな人間になりたいか
「自分はどんな人間になりたいのだろう?」
『理想の自分』なら経験していることを決め、それに向かって努力する。
 
あえて極端な目標を立てる
「自分にとって究極の成功とは何か?」
追い求める価値のある目標は、失望したくないあまり薄めてしまったバージョンではない。自分が本当に望んでいるバージョンを追い求めるべき。
 
 
新しいことに挑戦する
 
「人間は1日でできることを過大評価し、1年でできることを過小評価する」。この期間を「10年」にまで広げると、さらにぐっと過小評価が激しくなる。投資と同じように、10年たてばかなり大きな複利効果が期待できる。
 
 
 
■忍耐強さ
 
 
戦略的忍耐
 
「一夜にして成功するには10年が必要だ」
すべては長い目で見ることが必要。必要な努力を理解し、その努力を続けることで、自分の力で「いいこと」を起こす。
 
指数関数的成長には「欺きの段階」がある
 
自動運転車、3D プリンター、AI、これらはいきなり現れて世間を驚かせた。しかし、技術はずっと存在した。密かに成長し、発達していた。ただ、初期段階では変化が小さすぎて誰の目にもとまらなかっただけ(=欺きの段階)。
 
指数関数的に成長するのは、テクノロジーとビジネスだけではなく、人生も同じ。人生のほとんどは「欺きの段階」
ロングゲームをプレイするとは、その不安の時期を乗り越える粘り強さをもつということ。
 
うまくいかないときはどうするか
「なぜ私はこれをしているのか?」
自分の価値基準、「核となる原則」を明確にしておく。
 
 
成功するまでに本当に必要な時間や努力を知る
 
あまりにも多くの人が、根拠もなく自分の能力を過大評価する。目標達成までのプロセスや成功のために本当に必要なことを調べようともせず、夢のようなことばかりを語り、その裏にある努力や犠牲のことは都合よく無視する。
成功への道のりは楽ではない、最初からその大変さを理解していれば、賢明に戦略を立て、途中で挫折しても立ち直ることができる。
 
ほかの人が3年かかったことを自分なら半年でできると考える。すぐに「自分もそうなりたい!」と考える。しかし、最初からそれを期待するのは虫がよすぎる。まずは自分の状況を理解し、戦略を立てる。
 
ロングゲームをプレイするとは、「前もって計画を立てる」こと。そして「短期の犠牲を払ってでも、大切な目標を達成する」こと。自分を律して、時間管理ができるようになって、キャリアを積み重ねる。その結果、夢をかなえる余裕が手に入る。
 
 
「3年単位の目標ばかり追っていると、たくさんのライバルと闘わなければならない。しかし7年単位の目標にすると、ライバルは激減する。そんな先まで考える企業はほとんどない。時間軸を伸ばすだけで、短期では達成できないような大きな目標に取り組めるようになる」(ジェフ・ベゾス)
 
 
大きな夢をかなえたいなら、目に見えない地道な努力を今から始めなければならない。続けていれば、いつか指数関数的な成長を経験する。大切なのは忍耐力。簡単な道を拒否し、意義のある行動を選ぶためには、「積極的な忍耐力」が必要。
結果はすぐには現れない。1日では目に見える進歩はない。しかし、5年、10年、30年たてば、必ず結果が見えるようになる。
 
 
 
監修・伊藤守氏のあとがき、スポーツ選手コーチ・ダグラス氏の話より
 
スポーツ選手は職業人生が短い。身体的な限界があるため、企業のように60歳まで選手として働くというわけにはいかない。そして、引退後に誰もがコーチや監督になれるわけでもない。したがって、その後の人生設計をどうするかが重要。
ダグラス氏は、試合でどうするかということではなく、「その先をどうするか」をつねに聞いていた。メダルを取った後、どうするのか。その先がはっきりすればするほど、現在に力を使うことができるのだと。
「金メダルを狙っても金メダルには到達できない。金メダルを通過点にする人が金メダルをとれる」のだと。
 
「人生をどうしたいのか」
「その先をどうしたいのか」
 
3年後や5年後のビジョンを持つように、などと言われるが、それでもまだ短期的なのではないか。そもそも自分の人生をどうしたいのかということから考える必要があるのではないか。
 
目先の問題をどう解決するかと考えるよりも、その問題と思われるものが、長い目で見たときに、本当に問題なのかどうかを考えてみることも大切。
 
 
 
現在の状況を長い視点でとらえるのと短い視点でとらえるのとでは、見えるものがずいぶん違ってきます。