「サクッとわかる ビジネス教養 地政学」(奥山真司)
目からウロコとまではいかないまでも、新しい視点に出会い、とても勉強になった。
例えば、アメリカが島国という認識はなかった。陸でつながる国はカナダとメキシコのみで、アメリカからみればかなり格下なので、侵略される心配なし。国土は大きく、地理的にはかなり良い条件だ。
また、日本にいると実感わかないが、大陸で多数の他国と接する国は、長い歴史を通じて常に侵略される心配をしなければいけなかった。ロシアや中国のような大国でも、侵略の恐怖は常に持っていて、だから他勢力とのバッファー部分に位置するようなウクライナ、ウイグル、チベットなどを取り込みたい気持ちは特に強い。山脈や河という自然の境界があればまだしも、ウクライナとロシアの国境は平原であり、陸をつたって、ジワジワ攻めて来られるかも、というような心配はわからないでもない。だから、他国に取られる前に、自分で取っておきたい、という行動にかられる。
一方、日本は欧米列強から一番遠くにあって、かつ海に囲まれていたため、地理的には独立性を維持するのに良い条件だった。逆に、ロシアや中国をけん制する場所としても重要な位置にあり、また、経済1位のアメリカは経済第2位の中国に対抗するため経済3位の日本と手を組みたいという事情もあって、日米同盟は固い固い同盟であり続けるだろうと思う。
国際ニュースの理解度が深まること間違いなしの1冊。
以下、備忘
地政学とは、「国の地理的な条件をもとに、他国との関係性や国際社会での行動を考える」アプローチ
ランドパワー(大陸国家)…ロシア、中国、ドイツ、フランス、など
シーパワー(海洋国家)…アメリカ、イギリス、日本、など
大きな国際紛争は、常にランドパワーとシーパワーのせめぎ合い。
ランドパワーとシーパワーは両立できない。
ローマ帝国(ランドパワー)は海洋進出で国力低下
日本(シーパワー)は中国内陸部への進出をもくろみ失敗。秀吉の朝鮮出兵も失敗。
アメリカ(シーパワー)のベトナム戦争撤退も大陸内部に進んだ結果
日本
海に囲まれ、かつ海流や季節風の影響で海外から攻めにくく、自給可能な面積と人口があり、建国以来独立キープ
アメリカ
海に囲まれた大きな島で、陸で接する国とは国力の差が大きく、侵略される心配は小さい。
シェールオイル発見で石油利権の重要性低下、中東からは手を引きたいのが本音。
ロシア拡大を防ぐカギとしてアメリカが重視しているのは、ロシア進出ルートの最前線にあるトルコとポーランド。
中国
90年代にロシア、ベトナムと国境を確定。2000年代にほとんどの国境を固めた。これにより国防に割いていたパワーを国外展開に用いられる体制整う。これが、シーパワー国家を目指し海洋進出している理由のひとつ。しかし、ランドパワーとシーパワーを両立できた国はない。
イギリス
シーパワー国家として海外進出し、かつては世界を制覇。ユーラシア大陸とは距離を置き、強国が出てきたときには、その周囲国を支援し大陸内勢力が均衡するようコントロール。この伝統的戦略がEU離脱の背景に。
ギリシャ
ロシアが黒海から地中海に抜けるルートの要所にあり、かつ中東、アジア、アフリカなどをつなぐ場所。EUが小国のギリシャを見捨てずに金融支援した背景に、こうした地政学的重要性あり。