「科学的な適職」★★★☆☆ | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

「科学的な適職」(鈴木祐)

 

自分自身の適職を模索する、という視点と同等かそれ以上に、人事視点もしくは企業経営視点で非常に参考になった。

 

 

以下、備忘

 

幻想から目覚める…好きを仕事に、等は検証の結果正しくない

未来を広げる…実際のところ、本当に幸せにつながる仕事とは

悪を取り除く…避けるべき不幸な職場条件を確認

歪みに気づく…意思決定を誤らせるバイアスはすべての人に存在

やりがいを再構築する…やりがいを持つにはどうすればよいか

 

 

スティーブ・ジョブズは「好きを仕事」にしたわけではない。「楽して金を儲けられる」という広告を見てエレクトロニクス業界に入った。その後で、自分の仕事を愛するようになった。

 

 

適合派…「好きを仕事にするのが幸せ」「給料は安くても満足度の高い仕事をしたい」

成長派…「仕事は続けるうちに好きになるもの」「楽しくなくてもいいが給料はほしい」

適合派は情熱を持てる職を探すのがうまいが、幸福度が高いのは最初だけ。長いスパンで見ると、幸福度・年収・キャリアいずれも成長派の方が高い。

適合派は「好きな仕事」を求める気持ちが強い分、理想とのギャップを感じやすい。成長派は「仕事とはこんなもの」と割り切れる(結果的にスキルの上達も仕事の継続率もよい結果に)。

 

真の天職は「なんとなくやってたら楽しくなってきた」から見つかる。心理学では「グロウス・パッション」と呼ぶ。

 

 

仕事の幸福度を決める「7つの徳目」

1.自由:仕事に裁量権はあるか?

2.達成:前に進んでいる感覚(フィードバック等)は得られるか?

3.焦点:自分のタイプ(攻撃型か防御型か)に合っている仕事か?

4.明確:なすべきこと、ビジョン、評価軸は明確か?

5.多様:作業にバリエーションはあるか?関与範囲は広いか?

6.仲間:組織内に助けてくれる友人はいるか?

7.貢献:世の中の役に立つか(貢献を可視化できるか)?

 

研究の結果、給料や楽しさとは関係なく、社内に良い友人がいるだけで人生が幸福になるのは確実。


 

職場の8大悪ランキング

1.ワークライフバランスの崩壊

2.雇用が不安定

3.長時間労働

4.シフトワーク

5.仕事のコントロール権がない

6.ソーシャルサポートがない

7.組織内に不公平が多い

8.長時間通勤

 

帰宅後も仕事をする人は幸福度が40%減。プライベートで仕事のことを「考えただけ」でも幸福度は激減してしまう。


ソーシャルサポートの有無(同僚や上司に恵まれるかどうか)、は運動不足や喫煙よりも死亡率に影響(人類は社会的な動物として進化してきたため)。


 

バイアスとは人間の脳に巣食う「バグ」

私たちの意思決定力には生まれつき深刻なバグを抱えている。どんなに精緻な分析を行っても、意思決定を間違えてしまう。

 

「愚かなるは他人ばかり」

何よりも厄介なのは、たいていの人が「そういう人っているよね」と、自分には関係のない他人事と思っていること。いかに合理的な思考力を持った人でも、意思決定の精度には歪みが生じる。バイアスはすべての人間が生まれ持つバグであり、その影響から自由な人は存在しない。

 

 

「仕事に情熱を燃やす人ほど燃え尽きやすい」

研究の結果、高い目標を掲げた人ほど(エグゼクティブなど)、仕事を始めた時点では幸福度が高いものの職歴が長引くうちにストレスが激増し、怒りや不安の感情が増す。燃え尽き症候群とも関連しやすい(特徴は①モチベーション低下②自分の仕事に対する否定的感情や不信感③仕事の効率低下)

 

「やりがい搾取」

「熱心に働いている=モチベーションが高い、好きでやっている」と考える傾向があり、「情熱がある人は搾取しても構わない」と考えてしまうバイアスが生じる。長時間労働、低賃金、余分な仕事を押し付ける、等の不公平感は幸福度を下げる大きな要素なので、絶対にやってはいけない。

 

 

①人生は予測不可能なイベントの連続。事前の計画通りに進まない。

②自分のキャリアについて、事前に細かく決めるより大きな方向性だけ定めた方がよい。

③方向性を決めたら、人生に起きた偶然や予期せぬ出来事に柔軟に対応しキャリアを積めばよい。

 

「キャリアの80%は思いがけない出来事で決まる」(スタンフォード大 ジョン・クランボルツ)

 

 

無計画のまま享楽的に生きるのではなく、かといって適職の幻を追い続けるのでもなく、目の前の選択肢についてしっかりと考えたら、あとは人生の流れに身を任せる。

 

 

『科学的な適職』著者が語る「正解に最も近い答え」を出す方法