「異文化理解力」★★★★☆ | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

この本は、非常に面白くて、勉強になりました。
 
副題の「相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教義」は、とても的確に本書の内容を表しています。期待以上の内容でした。
 
自国では常識なことが、外国の人にとってはびっくりすること、ということはよくありますが、その傾向と対策が、詳細に正確に書かれています。
 
日本独特の「空気を読む」「飲みニケーション」「稟議」「根回し」などについて正しく分析されているので、他国の分析も正確なのでしょう。
日本人からすると、西洋人はおおむね同傾向だろうと思いがちですが、アメリカとヨーロッパでかなり傾向に差があるし、ヨーロッパでもアングロサクソン系とラテン系でかなり違います。
 
日本、中国、韓国は大体において同じ傾向に分類されることが多いですが、時間の感覚などについては中国と日本で大きく異なり、実体験からも納得感がありました。上海のカンファレンスに参加した時、何の気なしに開始時間が遅れたり、講演者が変わったりしました。日本であればクレームになりそうなことも、流動性・柔軟性に価値を認める中国では問題ないようです。
 
日本が高品質のものづくりやおもてなし系サービスで評価が高く、スピード重視のビジネスが不得意なわけも、本書を読んでいて自分なりに想像できました。
 
外国の人と仕事をする際には、この本を読んでいるかいないかで、かなり効率が変わりそうです。
 
また、日本人同士であったとしても、相手の価値観や思考の傾向をよく理解したうえでコミュニケーションをとることが重要なのだな、と感じました。
 
 
以下、備忘
 
フランス人には「第二語」という言葉があり、第一語では伝えない奥深い内容を第二語で話すことがある。
 
イギリス人は無表情で皮肉や冗談を言う。※アメリカ人がイギリス人のジョークに戸惑うエピソードが面白かったです。
 
オランダではネガティブなことをはっきり言わないことが失礼になる。アメリカ人が心に思っていないのに「素晴らしい」と言ったりすることが理解できない。
 
ブラジル人はランチや夕食にたっぷり時間をかけることを、ビジネス上の信頼関係を築く方法として重視している。
 
アジア人は包括的思考で全体から考える。西洋人は特定的思考で個から考える。人物の写真を撮ってくださいという実験では、日本人は全身を撮り、アメリカ人は顔写真を撮った。アジアでは住所を大きな地域から小さい地域の順に書くが、欧米ではその逆で名前を最初に書く。
 
アジアは孔子の教え、儒教の教えの影響が大きい。孔子は、誰もが自らの社会的身分をわきまえて身分に見合った行動をとるように気を付ければ、社会的秩序を保てると信じていた。
 
良いミーティングとは、アメリカ人にとっては「決断が下されること」、フランス人にとっては「様々な意見が議論され熟慮されること」、日本人や中国人にとっては「ミーティングの前に行われた決断が正式に承認されること」。
 
 
 
自分たちの文化の世界の見方は、あまりにも当然で一般的なため、別の文化には別の見方があると想像するのが難しい。他とは違う自分たちの独自の文化を認識することで、オープンな議論や、学びや、最終的な理解へといたることができる。