「社会脳の発達」 | Jiro's memorandum

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泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

社会脳の発達/東京大学出版会

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★★★☆☆



社会脳研究は、せいぜいこの20年くらいのようで、とても新しい研究領域です。

社会脳のオリジナルの定義は「他者の意図や意向を処理する神経機序」。もう少し幅の広い定義としては「(ヒトの)社会的な行動の基盤となっている脳神経の機序」となります。





ヒトの脳は体重の2%しかありませんが、体全体が使うエネルギーの20%を消費します。脳が大きいと、たくさんの食料を必要とするので、エネルギー効率の面から考えると、ヒトの脳は生き延びるためには不利な構造をしています。


にもかかわらず、なぜヒトの脳は進化の過程で大型化したのでしょうか。


ダンバーは、社会的な環境をうまく処理できるように進化したという「社会脳仮説」を提唱しました。大きな群れになると、家族、友達、仲間、ライバル、といった複雑なつながりを持つことになります。そうした群れの中で、ヒトの知能は社会的な問題を解くのに適したように進化したのではないか、と。

キリンの首が高い場所の食料をとるのに適し生存の確率が高まったように、ヒトの脳も社会の中で他者とうまくやりながら生き延びる能力、社会的な環境への適応として進化したのではないか、と。




ヒトは、目にも特徴があります。


ヒトの目は白目がはっきりしています。霊長類は一般的に白目の部分に濃い色がついています。ヒト以外の霊長類は、相手に自分の意図や注意の方向を知られると不利になるため視線を隠す必要があります。一方、ヒトは目で合図をしたり、意思を伝えたり、感情を読み取ったり、といったように目が重要なコミュニケーションの役割を果たすため、白目がはっきりしています。

「目は口ほどにものを言う」「目は心の窓」「目で訴える」「アイ・コンタクト」・・等の言葉がありますね。

人を説得したりするとき「オレの目を見ろ」とか、言います。

相手からの視線を感じると、ヒトはより利他的に、協力的になる、という研究結果もあります。

ヒトの脳は、自分に向けられた視線を素早く検出し、それによって社会的な情報処理や社会行動を調整する、という働きを持っているのです。





デバイスの最終形はこれになるのか。





◇参照:「ソーシャルブレインズ入門」
◇参照:「人は見た目が9割」