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★★★★☆
原題は"The Social Animal"。
読み終わって… どちらかというと原題の方がしっくりきます。
日本語の副題は"「無意識」があなたの一生を決める"
最近、合理主義的な思考や推論(意識的な認知「レベル2の認知」)よりも、無意識の中の直感や想像(無意識の認知「レベル1」の認知)の重要性が言われています。
参照:理性と感情の葛藤
参照:Thinking, Fast and Slow
人間の本能とか脳のしくみとか、まだまだ解明されてないことが多くて、面白いです。人間の本能・本性をよく理解すれば、SNSやソーシャル・ゲームがなぜ楽しいのか、分かってくると思います。
以下、備忘
赤ん坊には、できるだけ母親に触れたいという太古の昔から変わらない欲求がある。身体的接触は、栄養の摂取と同じくらい、生存や成長(特に脳の発達)にとって重要。
養護施設から里親に引き取られた子供は、施設に残った孤児よりもIQが50ポイントも高くなった。教育ではなく、母親が愛情を注いだ事が要因。
人は誰か他の人といる時、自分一人でいる時の30倍くらい多く笑っている。
自分が話している時の笑いの方が、人の話を聞いている時の笑いより46%も多い。
必ずしも、面白い話を聞いたから笑うわけではない。笑いが起きたときの話のうち、間違いなく「面白い」と言えるものは15%しかない。笑いは、話が面白いから起きるというよりも、その状況が心地よいもので、また他の人も同じように察知した時に自然に起きるもの。
人と人との間いに生じた緊張が緩和した時に笑いが起きることが多い。笑いは、人が互いの間の関係を築くために使う言語であるともいえる。
ギリシャ語には、「勇気」「気概」などを意味する「テュモス」という言葉がある。他人に自分の存在を認めて欲しいという願望も含まれる。
全ての人間の祖先は同じであり、本能レベルでは同じような性質を持っている。他のすべての人にとって価値ある人間となり、永遠に賞賛される存在となるという理想。そういう理想へと向かう原動力になるのが「テュモス」。
アメリカ人は一般に、自分はどこが人と違うか、優れているのはどこか、ということをやや大げさに話す。アジア人は、自分が周囲の人とそう変わらない普通の人間であり、色々な人と持ちつ持たれつの関係になっていることを強調したがる。
IQが120を超えると、知性と業績の間の相関関係はほとんどなくなる。IQ150の人と120の人の30ポイント差は、人生の成功にはほとんど寄与しない。世間で「良い大学」とされているところに入れれば十分。
スーパーでは入口に野菜や果物を配置する。最初に「ヘルシー」なものを買った人は、あとでジャンクフードをたくさん買いやすくなるから。
何かが焼ける匂いがすると、刺激されて買い物が進む。店内で生地からパンを焼く店が多いのはこのため。
店内でフランスの音楽をかけるとフランス産ワインがよく売れ、ドイツの音楽をかけるとドイツ産ワインがよく売れる。
人には調和を求める気持ちがあり、不和が調和に変わる瞬間は快感である。パズルが解けた時や、散らかっていた机の上を片付けたときも快感を覚える。
経済学はもともと純粋に合理主義的な思考をする学問分野ではなかった。アダム・スミスは道徳の感情が人間の行動に影響を与えると信じ、他人の称賛を求める気持ちや、称賛に値する人間でいたいという気持ちも、行動を左右すると考えていた。
シュンペーターやハイエクなどは、自分の主張を展開するのに公式などは使っていない。強調しているのは経済活動には常に不確実性がつきまとうということ。人間を動かすのは理性とは限らず、想像力によって動かされることも大いにあるから。
アダム・スミスは「国富論」で、個人が自由に自己の利益を追求すれば社会全体に資源が適切に配分されると書いている。同時に「道徳感情論」という本も書いている。人間は利己的だが他人への共感も持っており、他人からの尊敬を得たいという無意識の願望も持っていると書いている。
「国富論」に書いた経済活動はあくまで、「道徳感情論」に書いたことの基盤の上に成り立っているものだと考えた(よく知られているのは「国富論」ばかりだか)。
「自然が人間を社会的な存在として作った時から、私たちは生まれながらに同胞を喜ばせたいという欲求を持つようになり、同胞を不快にさせることを嫌悪するようになった。同胞から好ましいとみなされることを喜び、好ましくないとみなされることを悲しむ。そんな気持ちを自然が与えたのだ」(「道徳感情論」より)
グローバリゼーションで「情報が一瞬で2万キロ先にまで伝わる」ということばかり強調されるが、情報がどんなに長い旅をしたとしても、本当に大事なのは、旅の最後の数センチである。私たちの目や耳に届いてから脳の様々な部位に入るまでの間が特に重要だ。