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「私はこの「峠」において、侍とはなにかということを考えてみたかった。(中略)その典型を越後長岡藩の非門閥家家老河井継之助にもとめたことは、書き終えてからもまちがっていなかったとひそかに自負している」(司馬遼太郎) ※あとがきより
河井継之助は開明論者で士農工商の崩壊を明確に見通していた。
戊辰戦争が始まり、新政府軍か旧幕府軍か、という選択を迫られるなか、中立の維持と長岡藩の独立にその答えを見出し、戦争回避を最後まであきらめなかった。
しかし、理想に過ぎなかった。
小千谷での談判、その結果、薩長の新政府軍と戦うという苦渋の決断を余儀なくされる。このあたりは感情移入しながら読んだ。
最終的には「いかに美しく生きるか」という武士道倫理に戦争の意義を頼った。
激烈な北越戦争において、周到に準備していた新兵器・機関砲を自らぶっ放し、奇襲夜襲で新政府軍を苦しめたものの、多勢に無勢では勝ち目なく、足に致命傷を負って、遠い会津を目指す。
この物語の最初の江戸に向けて意気揚々と三国峠を越えて行くシーンとは対照的なラスト。
八十里こしぬけ武士の越す峠
非常に感慨深い詩です。
追記
下級武士や庶民階級からなる薩長軍のエネルギーの強さも感じました。
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