特に日本が今、直面している問題は、戦後ずっと続いてきた産業構造や雇用慣行の行き詰まりなど経済システム全体の問題であり、これを金融・財政などのマクロ政策や労使紛争と考えているかぎり、解決の糸口は見出せない。1990年代から続いている経済の停滞は、まもなく「失われた20年」になろうとしているが、その終わりは見えない。
ところが、政治家にも官僚にも、この長期停滞をどう脱却するかという問題意識はなく、このままあと10年も何もしないと、日本は立ち直れなくなる恐れが強い。かつてポルトガルが、世界最大の海運国だった時代を知っている人がいるだろうか。モーツァルトを聴く人は、当時のウィーンが全欧州の中心だったことを知っているだろうか。日本も、そうした歴史の短い時期に輝いた小国として忘れられていくのかもしれない。
これは本書の「はじめに」からの抜粋。最近、この絶望的なシナリオが現実的に思えてならない。
日本的雇用慣行、官僚内閣制、すりあわせ型ものづくり・・・ 高度成長期に機能した経済システム、過去の成功体験への希望を一刻も早く捨て去るべきだ。
そのためには、黒船や敗戦に匹敵する存亡の危機が必要なのかもしれない。民主党政権は危機をもたらす可能性が前政権よりも高いと思う。そういう点では、政権交代は結果的に良かったということになるかもしれない。
今の日本に足りないのは希望ではなく、変えなければ未来がないという絶望ではないか。(本書「あとがき」より抜粋)
希望を捨てる勇気―停滞と成長の経済学/池田 信夫
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