「ア・ラ・iモード」 | Jiro's memorandum

Jiro's memorandum

泉治郎の備忘録 読書の感想や備忘録 ※ネタバレ注意
【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

★★★★☆

「iモード・ストラテジー」では複雑系という言葉を使っていたが本書では生態系とかバリューチェーンという言葉を使っている。

ドコモの役割は、生態系を可能な限り大きく育てることである。つまり、「多様な草木を育てることにより、様々な草食動物が生活できるようにする。それによって肉食動物も集まってくる。様々な動植物が集まることで、生態系全体が繁栄する」というポジティブ・フィードバックを生むことだ。P.20

これは非常にわかりやすい表現だと思う。

ドコモはこの生態系の育成に成功した(「iモード・ストラテジー」参照)。予想外の動植物がたくさん育った。バンダイのヒットサービス「いつでもキャラっぱ!」も巨大市場になった着メロも、ドコモにとって想定外のサービスだった。

一方、ドコモ自身が利用シーンを想定して手を加えた施策が意図したとおりの結果をもたらしていなかったりする。例えば、AOL、プレステ、ローソンなどとの提携事業がそうだ。もっとも、すべての施策が当たるわけではないし、事業は失敗を経験しながら成長するものだとは思う。

いずれにしても、大きく育つサービスは熾烈な自由競争の中から生まれる。参入のハードルをできるだけ下げることがポイントであろう。全盛期の着メロにしろ、最近伸びている電子書籍にしろ、参入企業は多い。


あと、本書を読んで生態系を大きく育てる上で重要だと思った点は「成功体験」。

一部の歯車を動かした後、さらに大きな回転を生み出すにはどうすれば良いか。次なる潤滑油は「成功体験」である。身近に成功体験があると、関係者は一斉に動き出す。P.33

iモードで言えば上述した「キャラっぱ!」や着メロ。サイバードのIPOもインパクトがあったと思う。米国のソーシャルアプリではRockYouの大型資金調達が注目されたし、ZyngaやPlayfishの成長はまさに成功体験と言えよう。

日本のソーシャルアプリも歯車は回りだした。次は成功体験が出てくるかどうかがポイントだ。



ア・ラ・iモード—iモード流ネット生態系戦略

$May The Force Be With Social Media-アラiモード



追記

ネットのビジネスは、一企業がどんなに頑張っても限界がある。できるだけ多くの企業と「WIN-WINの関係」を結べるビジネス・モデル、そしてそのタイミングが重要なのであった。・・・ユーザーにとっての最終的なバリューチェーンを的確に想定し、自社がどのポジションで何を提供し、何を提供しないかを見極めなければならなかったのだ。P.59